「関西のトップ営業」はなぜ東京でも活躍できるのか?度胸とトーク力が磨かれるワケ
大阪・関西万博を控え、関西に注目が集まっています。関西の文化、食べもの、歴史などはよく語られますが、“関西企業”についてはあまり論じられてきませんでした。しかし、じつは関西にはサントリー、ダイキン、パナソニック、京セラ、シャープなどグローバルで活躍するような有名企業がたくさんあることをご存じでしたか?日本総合研究所調査部長/チーフエコノミストの石川智久氏は大阪で8年間働いた経験から「日本企業が元気になるカギは大阪にある」といいます。そこで今回は同氏の新刊『大阪 人づくりの逆襲』(青春出版社刊)から、関西の人材育成風土について、抜粋して紹介します。 ● なぜ関西のトップ営業は東京でも活躍できるのか 大阪企業の人事関係者からよく聞く話があります。 それは、「良い人材はどこでも取り合いとなるけれども、関西だと比較的すんなり探せる、関西で優秀な営業職は関東でも活躍するが、逆に関東の優秀な人が必ずしも関西で成功するとは限らない。東京が確かにスタートアップ企業の中心となっているが、社長は関西弁をしゃべっている、つまり関西出身が多い」といった話です。 その理由は様々あると思いますが、私は関西のお客さんが営業パーソンを教育している面が強いと考えています。大阪人の文化、おせっかいなところは、もちろんお客さんにもあり、おしゃべりな人がいろいろ教えてくれるので、営業パーソンに知識と知恵が備わっていきます。また、東京よりも飛び込み営業がしやすいので、アポなしでお客さんを訪問する営業スタイルはまだまだ健在です。いろんなところに飛び込んでいる間に、度胸とトーク力をあげていくのです。 人材派遣会社の方とお話しすると、関西の人は非常に優秀であっても東京に行きたくないという人が比較的多く、そのため大学や就職の際に地元に定着しやすいといいます。
東京は営業パーソンが多いこともあり、分業的です。ところが大阪のような地方だと、勤務している人の数が少なく、複数の業務を1人でこなさなければなりません。必然的に、どこでも活躍できるオールラウンダーな人材が、勝手に育っていくわけです。 東京に本社がある場合、本部から距離的に遠いので、サポートを受けにくくなるデメリットもあるのですが、逆に本部から遠いので、実験的なことをしても実は見つからないことも多いのです。本部のお膝元にいると、「なんだその企画は!」と潰されてしまうことでも、「まずはやっちゃえ」とチャレンジしやすく、思いがけないアイデアが多数生まれてくる土壌になっています。 ● 関西は「ファーストペンギン」の心意気で若者、部下を大事にする 関西では「ファーストペンギン」という言葉もよく聞きます。ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へエサを求めて最初に飛び込むペンギンのことを指します。それが転じて、先駆けて新たな取り組みを行う企業や人材をファーストペンギンと呼ぶことが増えています。 こうしたなか、関西経済連合会が作成した関西ビジョン2030においても、「~先駆ける関西、ファーストペンギンの心意気~」と先駆的な存在でありたいとの姿勢が示されています。 他の経済団体はどのようなビジョンがあるのでしょうか。 経団連のビジョンが「『豊かで活力ある日本』の再生」、北海道経済連合会が「2050北海道ビジョン~『課題解決先進地域』のフロントランナーを目指して~」、東北経済連合会「新ビジョン2030『わきたつ東北』~結び、はぐくみ、未来をひらく~」、北陸経済連合会が「スマート・リージョン北陸」、中部経済連合会「中部圏の将来ビジョン~2050年を見据えた中部圏の広域的な地域づくり~」、中国経済連合会「活力に溢れ豊かさが実感できる中国地方」、四国経済連合会が「四国が目指す将来像~四国の未来創生に向けた問いかけとして~」、九州経済連合会が「九州将来ビジョン2030-共生・共感・共創アイランド九州~成長と心の豊かさをともに~-」となっています。 各団体の性格が意外と出ています。関西人の、より先駆けたい気持ちの表れが手に取るようにわかるのが興味深いです。