「関西のトップ営業」はなぜ東京でも活躍できるのか?度胸とトーク力が磨かれるワケ
さて、ファーストペンギン理論では、ファーストも大事であるが、セカンドペンギンもさらに重要だといわれます。なぜならば、ファーストペンギンは1人で飛び込んでも、その時には周りから変わり者としか見られず、誰もついていかないまま終わってしまうからです。 ファーストペンギンが飛び込んだ後にそれに追随するセカンドペンギン、サードペンギンが必要なのです。関西では確かに人より先に行く人も多いのですが、それを温かく見守るやさしい人がたくさんいます。 その一つの例がいわゆる“あめちゃん”をくれる関西の女性です。関西で新しいことをやっている人の周りには、そうしたセカンドペンギンがたくさんいるということにも留意する必要があります。ある意味、人とは違うことをやっても許容する文化が、先駆けるためには不可欠なのです。 ● 「やってみなはれ!」の裏側にある関西人の思い ファーストペンギンという言葉を聞いて、「やってみなはれ」という言葉を思い出した方もいらっしゃるかもしれません。ある意味、この言葉がもっとも関西の経営者や企業人を鼓舞する言葉ともいえます。 自分の信念や思いに従って、まずはやってみる実験場所という、関西にまさにふさわしい言葉だと思います。この言葉は、サントリーの創業者鳥井信治郎の言葉です。そしてこの言葉は歴代の社長が検証し、今では関西の人々の元気が出る言葉に成長しました。様々な文献を見ると、松下幸之助さんもこの言葉をよくおっしゃっていたようです。 鳥井さんは、ワインや国産ウイスキーの製造に執念を燃やしました。当初は、海外モノが美味しく、日本で作るなんて、とても無理だと思われていました。 しかしながら「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」との言葉で、やり遂げたのです。私はこの言葉の裏側にあった信念にも注目します。
それは「洋酒報国」です。日本人に受け入れられるウイスキーを作り洋酒の輸入金額を半分にすることで、日本に貢献したいという思いです。そして「わしがウイスキーを作るのは、日本の事業者が誰1人手を出そうとせんから。日本でもウイスキーを作れることを実証したいんや」という言葉にも信念を感じます。人間は、「自分が世の中に役立っている」という使命感がないと、最後まで努力ができません。 さて、「やってみなはれ」というと、何でもかんでもチャレンジするように見えますが、当然ながらどこかに自己規律がないと失敗だけになってしまいます。 キーエンスの創業者滝崎武光さんは、「やってみなはれ。でも儲けなきゃだめよ」と添えているようです。キーエンスは時価総額よりも一人当たりの利益率や一人当たりの生産性にとてもこだわりを持っています。また日本一高い給料を目指すともいっています。その意味でやはり儲けについて真剣に考え、そのためには何でもやってみようと思っているようです。 また、やってみなはれの裏側には、人を肩書でみるのではなく、アイデアや人間性で見ていく文化があると思います。 鳥井信治郎氏は、「日本に報いたい」という気持ちからの「やってみなはれ」でした。キーエンスも社員の満足度を上げるための、「やってみなはれ」です。「やってみなはれ」の前に何を目標にするのかということが、とても重要になります。
石川智久