内山が失神TKOでのV10に成功した「影」パンチ
これでV10成功。元2階級王者、長谷川穂積(真正)の持つ日本歴代2位の最多連続防衛記録に並び、具志堅用高氏の持つ13度の記録が見えてきた。そして、9度のKO防衛は、具志堅氏の持つKO防衛の最多記録に並んだ。 「記録というよりも、パッキャオとメイウェザーの試合を見てしまうと、あれが雲の上の、そのまた上であることはわかっていても、ああいう(ラスベガスの)舞台でお客さんに喜んでもらえる試合をしたいと思う。三浦戦に限らず、他の統一戦でもいいかなと」 この日のテレビ解説のゲストには、同級のWBC世界王者である三浦隆司(30歳、帝拳)が呼ばれていた。1日に戦慄KOで4度目の防衛に成功したばかりの王者は、試合後、場内のマイクがオンにされると「凄いKOで興奮しました。統一戦? まだまだ練習していかなければいけませんが、いずれやる準備はできているし、いずれやりたい」と、公開オファー。それを受けて内山も、「おそらくぶつかると思う。前回と同じようにいかないことはわかっている。決まったならば挑みたい」と応えた。 水面下で一度は決定していたという両者の統一戦も現実問題としては多くの障害がある。現在は、それぞれの放映局も違い、三浦サイドは、内山よりもWB0同級王者のローマン・マルチネス(プエルトリコ)との統一戦実現を優先させている。内山も「三浦戦にこだわっているわけではない」と言う。 両者は、4年前の1月に対戦。内山が逆転で8回TKO勝利を収めている。そこから成長した三浦には、リベンジの念は強いかもしれないが、内山の遠い視界にあるのは、三浦ではなく世界の強豪だ。 元々は、メイウェザーの後継者と言われるほどファイトスタイルの似ているエイドリアン・ブローナー(アメリカ)との対戦を想定してフィジカル強化を進めてきた経緯がある。そのブローナーの階級は上に上がったため手の届かぬ存在となったが、内山が「できたら面白い」と対戦を熱望するのが、昨年10月に5階級王者、ノニト・ドネア(フィリピン)をKOで下してWBA世界フェザー級のスーパー王座に認定されているニコラス・ウォータース(29歳、ジャマイカ)。185もリーチがあって、南米系特有のスピードに加え、パンチ力も兼ね備えている全身バネのような王者だが、その体格ゆえに階級アップが噂されている。 ウォータースが、スーパーフェザーに上げてきて内山との試合が、ラスベガスで実現すれば、KO決着必至のファン必見のカードになるのは間違いないのだが、実現のためにはジムの本気度に加え、大物プロモーターを巻き込んでの交渉力と資金も必要になってくる。渡辺会長は「ジムとしても内山の希望を叶えてあげたい」と話しているのだが。35歳になった内山の肉体と右の拳が万全のうちにドリームマッチを見てみたいと願うのは筆者だけだろうか。(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)