申請しなければ手取りが減る…定年を迎えた60代が直面する「年収の崖」を賢く乗り越える方法〈社労士の解説〉
一方、国民健康保険の人は、働いた収入と年金のすべての収入(326万円)が、保険料算出の対象になります。仮に、65~70歳までの5年間同じ収入だとしたら、会社の健康保険は26万4000円、国民健康保険は93万9850円、その差は、驚くことに67万5850円にもなります。大き過ぎる差ですよね。 健康保険組合は、組合ごとに保険料率が設定されています。中小企業が多く加入している協会けんぽは、同じ協会けんぽ内でも都道府県ごとに保険料率が異なります。国民健康保険の保険料は地域によって異なるのでこの数字は参考ですが、大きな差はありません。 ■病気やけがで働けなくなってもお金がもらえる 会社の健康保険でもう一つ見逃せないのが、傷病手当金です。傷病手当金とは、保険に加入している人が病気やケガで会社を休み、給与がもらえないときに支給されるお金です。支給要件は、以下の3つです。 ---------- ● 病気やケガのため、仕事につけず療養中である(医師の証明が必要です) ● 継続した3日を含み4日以上休んだとき(土・日・祝日を含みます) ● 給与が傷病手当金の額よりも少ない場合(その差額が支給されます) どれくらいもらえるかというと、 ● 直近1年間の月額平均給与の30分の1×3分の2×支給日数。 ---------- ちょっと難しいので、分かりやすく具体例を出すと、平均給与が8万8000円だったとすると、1日あたり1955円になります。 例えば、欠勤日から71日目に復帰した場合は、先ほどの支給要件によると、最初の3日間が待期期間になるので支給期間は67日です。つまり、この場合は13万985円が支給されます。しかも、傷病手当金は国からの支給なので非課税です。最長1年6カ月分もらえます。 さらに、出勤と欠勤を繰り返した場合、出勤した期間を除いて通算1年6カ月(通算)支給されます。また、傷病手当金をもらっていても、在職中は、年金もまるまるもらえます。制度を賢く利用して、定年後を安心して過ごすのがよいと思います。 ---------- 社労士みなみ(しゃろうしみなみ) 社会保険労務士 YouTuber 年金をはじめとする「老後のお金」をテーマに情報発信を続ける社労士YouTuber。知識や経験のないまま投資を始めて失敗する高齢者が多い現状を変えるべく、「年金最大化生活」を提唱している。かつては大手銀行に勤務し、資産運用のアドバイスを行っていた。自身も20代から資産運用を始め、その運用歴は30年になる。50代に入って子育てが落ち着いたことをきっかけに、社会保険労務士として開業。開業社労士として活動しながら、主婦の経験も生かした生活者目線で専門的な知識をわかりやすく解説する動画も配信。FP2級も保有。 ----------
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