申請しなければ手取りが減る…定年を迎えた60代が直面する「年収の崖」を賢く乗り越える方法〈社労士の解説〉
実は、パートやアルバイトでも、条件さえ満たせば、雇用保険、健康保険に加入できます。現役時代の職業に囚われる必要はありません。思い切って好きなことや興味があることから仕事を選ぶのもいいと思います。 なかには、働くことで新しいやりがいを見つけて、65歳を過ぎてから新しい事業を始める人もいます。 人生100年時代の今は、60代で老化を意識する人は少なくなってきているかもしれませんが、働かなくなって、日常での活動量が減り、社会との接点が少なくなると、一気に老化が進みます。 私は、定年後も働けるなら働いた方がいいと思います。 できるなら、70歳までは働くことをお勧めします。 ■国が15%の給与補填をしてくれる―「高年齢雇用継続給付金」とは 定年制を定めている企業の約8割は60歳定年ですが、多くの企業が、60歳を過ぎても再雇用契約や嘱託契約など雇用形態を改めて、働き続けられるようになっています。 また、2025年4月からは、65歳までの継続雇用制度が義務化されるため、働き続けたいと希望すれば65歳まで働くことができるようになります。 60歳を過ぎても働くことを、政府も後押ししています。まずは収入の面です。 もしも、あなたが60歳を迎えて、働き続けようかどうか迷っているとすれば、理由のひとつは、雇用形態が変わることによる収入減でしょう。多くの場合、再雇用や嘱託契約になると、それまでの給与から3~4割減るといいます。 同じ仕事を続けるのに給与が下がれば、誰でもモチベーションが下がります。働きたいけど、働く意欲がわかない。そんな人たちを応援する制度が、少なくなる給与を補填してくれる「高年齢雇用継続給付金」です。 給付金ですから、該当する人は、申請すれば誰でももらえます。しかも、非課税です。60~65歳限定の給付金ですが、その間は、給与以外に、税金がかからないお金を国からもらえるということです。 ただし、この制度は、2025年に60歳に到達する人から、給付率が15%から10%になり、給付額が減ります。65歳定年が義務化され、高齢者の雇用が安定するまでの特別措置だと思われます。 もらえる権利があるうちに、しっかりもらいながら働き続けるのが、賢い選択でしょう。 給付金をもらえる人は、60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金と比べて、75%未満になった人たちです。例えば、60歳時点で月給48万円もらっていた人が、60歳以降の賃金が月給36万円未満になったらもらえるということです。 定年後も働いている人たちの話を聞くと、75%未満という条件を満たす人はかなりの割合でいるようです。