考察『光る君へ』43話「そもそも、左大臣殿に民の顔なぞ見えておられるのか?」「賢人右府」実資(秋山竜次)の面目躍如、きっとすごい勢いで日記を書く
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。 深刻な病に苦しむ三条帝(木村達成)、順風満帆に見える道長(柄本佑)にも問題はあって……。さまざまな人物の苦悩が交錯する43話「輝きののちに」でもまひろ(吉高由里子)は光源氏亡き後の物語「宇治十帖」を書き続けています。最終回まであと5話! ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載45回(特別編2回を含む)です。
こんなに取材が捗る現場は他にない
長和3年(1014年)。前年に三条帝(木村達成)とその中宮・姸子(きよこ/倉沢杏菜)の間に、禎子(よしこ)内親王が誕生した。大河ドラマ『平清盛』(2012年)で伊東四朗が演じた白川院の、おばあちゃんに当たる赤子が登場だ! と冒頭からテンションが上がってしまった。皇子ではなかったと気落ちする道長(柄本佑)……。その後内裏の火災により、三条帝と姸子は皇太后・彰子(見上愛)の住まいだった枇杷殿に引っ越し、彰子は弟である頼通(渡邊圭祐)の邸宅である高倉殿に引っ越し。現在、高倉殿には敦康親王(片岡千之助)がいるが、祇子(のりこ/稲川美紅)女王を妻とした今はすっかり落ち着き、義母・彰子への狂おしいような思慕は静かなものとなったようだ。 彰子、頼通という道長の子たち、一条帝(塩野瑛久)と中宮・定子(高畑充希)の子である敦康親王、村上天皇の血を引く祇子女王とその姉で頼通の妻である隆姫(たかひめ/田中日奈子)……煌びやかな顔ぶれを、まひろ(吉高由里子)がジットリと観察している。なにしろ『源氏物語』「宇治十帖」の執筆中なのだ。こんなに取材が捗る現場は他にない。 光源氏の死後。表向きは光源氏の息子だが、女三宮と柏木との不義密通の子──薫と、光源氏の孫・匂宮を中心として物語は進む。薫と匂宮は年齢が近く、匂宮は六条院でともに育った薫をライバル視するところがあった。薫はあの光源氏の息子と世間からもてはやされるのとは裏腹に自身の出生に疑いを持ち、そうした悩みを抱えるがゆえに仏教に深く帰依する。 そんなふたりに、宇治に住む大君・中君という美人姉妹との縁が生まれてしまう……。 宇治の川辺で、人生でやるだけのことはやった! やり切ったけれど、私たちはまだ共に生きていきましょうと誓ったあとに、希望に満ちた話ではなく「宇治十帖」を生み出すなんて。さすがまひろ様は根がお暗い(褒めてます)。暗いけれど、『源氏物語』は続編も面白いのだ。
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