“ACL疲れ”の不安が現実に。降格圏と勝点5差の厳しい一敗に川崎は改めて覚悟を示せるか
隙が生まれて名古屋に敗戦
[J1第31節]名古屋 2-0 川崎/9月22日/豊田スタジアム 不安が的中したゲームとも言えただろう。 【動画】名古屋×川崎ハイライト 川崎は名古屋戦の4日前に韓国で蔚山とのACLエリートの初戦を戦い、強度の高いゲームに1-0で勝利。一方で蔚山のスタジアムはピッチが荒れた状態で疲労はより増した形となった。 疲れは決して言い訳にしない。過密日程を乗り越えてこそ、アジアの舞台を戦うクラブである。 それは川崎の誰もが共有している想いである。ただし、現実問題として、帰国したばかりであったCBの佐々木旭はこうも話していた。 「毎試合、疲労は次の日は残っていますが、また違った疲労感と言いますか、すごく足とか膝に来ている感じはします。(ピッチが)すごくボコボコしていたので、トラップひとつにも非常に気を使ってやっていましたし、普通に走るだけでも足を捻らないようになど気を付けてやっていたので、そういったところで変なところに疲労はきているのかもしれないです。 でももちろん身体は疲れていますが、疲れたなと思ってやるのと、気持ちをしっかり切り替えてやるのでは、やっぱり身体の動きは異なるので、しっかり頭と身体を切り替えてやっていきたいです」 同じく試合2日前、状況を把握しつつ、リーグ戦では下位に沈むなか、順位の近い名古屋戦へ鬼木達監督は意気込んでいた。 「やはりこのゲームが非常に重要だとみんなに理解してもらうこと、そこに尽きるかなと思います。鳥栖戦(9月13日/○3-2)もそういうゲームでしたし、この名古屋戦もそうですし、次の新潟戦もそうです。ここで自分たちがどういうところを目指していくのか、立ち位置などを自分たちで変えられるタイミングなので、そこを逃しちゃいけない。そう強く思っていますし、選手にもそこを伝えていきたいです。 いつも話していますが順位でサッカーの質が変わるわけではないので、毎節毎節、やっぱりフロンターレの試合を観たい、毎回面白いと言ってもらえるように、そういうゲームをアウエーですが届けたい。そのなかで絶対に勝ちたい、勝利は絶対条件でなくてはいけないと思います」 指揮官の熱意どおり、名古屋戦の試合の入りは良好だった。ボールを握り、セカンドボールにも鋭く反応。名古屋を押し込んだ。しかし、結果としてここでゴールが奪えなかったのが痛かった。 「オニさん(鬼木監督)はミーティングからモチベーションを高めることを言ってくれ、みんなも気合いが漲って良い入りができた。でも攻めている時に決められなくて、こっちの隙を突かれた。負ける典型的な試合だったかなと」 ACLで先発し、この日は途中出場だった、クラブと苦楽をともにしてきた小林悠も語る。 隙、という言葉は試合後の鬼木監督も指摘していた。 「何がなんでも勝ちたかったゲームでしたし、選手たちにもそういう話をして送り出しました。あれだけ多くのサポーターがいるなかで勝てなかったことを非常に残念に思っています。 立ち上がりは決して悪くなかったと思いますが、そのあと相手の狙いである背後をシンプルに突かれて全体が重くなって間延びしてしまいました。分かっていてもやられているシーンが多かったですし、とにかく今日は隙を見せたチームがやられると思っていましたが、自分たちがそういう形になってしまい悔しい思いです。ただ一つひとつ学んで、しっかりと結果に結びつけていきたい。ここからは本当に結果が大事なので、そこをしっかりと求めたいと思っています」 失点シーンはまさに対応が甘くなり隙を突かれた場面だったと言えるだろう。 34分には副審がフラッグを上げたことで、全体がやや足が止まったように映り、橘田健人も悔いた対応で永井謙佑に美しいミドルを決められた(VARでオフサイド、ハンドもないと判定)。 67分には右サイドでの名古屋のスローインを、シャドーの森島司のマークへ前に出たCB高井幸大が頭でクリアできず。ライン際でスローインを受けた永井の対応にもうひとりのCB佐々木旭もつり出され、折り返しを受けた和泉竜司をふたりのSBが止めきれずに失点した。 ともに最終ラインだけの責任ではない。ただ、全体の動きを見ていると、やはりACLの疲れがあったことは否定できない。1枚目のイエローカードから2分後の82分に2枚目の警告を受けて退場となったファンウェルメスケルケン際の守備も、通常の彼では考えられないようなプレーであったと感じる。 改めて指揮官、選手が口にしたのは「それ(疲労)は言い訳にできない」という言葉だ。 もっともここからは、ACLとルヴァンカップ準決勝を含め、さらに日程は厳しさを増す。そのなかで、降格圏と勝点5差に迫れらた状況は苦しいものと言えるだろう。 それでも理想と結果を追い求めるには、強い覚悟を胸にやるしかない。 「危機感を持ってやらなくちゃいけないし、一試合一試合勝点を取っていかないと厳しくなる。しっかり回復して次の試合に向けていきたいです」 小林はそう語ってスタジアムを後にした。 川崎は改めて逞しさを見せることができるのか、今こそクラブに関わる全員の決意が問われている。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)