フレグランスブランド、フローリス エリザベス女王も愛用していた「香りの芸術品」の魅力
連載《ロイヤルワラント図鑑》Vol.12
新生活を迎え、出会いが増える春。「第一印象で自分らしさを伝えたい」「新しい自分に出会いたい」……。そんな望みをかなえるなら、ファッションやヘアメイクを見直す前にお気に入りの香りを変えて、心機一転を図ってみては。そこでおすすめしたいのが、英国で歴代の国王や女王を虜(とりこ)にしてきたフレグランスブランド、フローリスだ。1730年の創業以来、フローリスファミリーによって代々受け継がれ、「香りの芸術品」と称される正統派フレグランスの魅力にフォーカス。 【写真を見る】建物そのものが英国の歴史的重要文化財に指定されているロンドンの本店からエリザベス女王にゆかりのある魅力的なフレグランスまで、写真はココからチェック
■1730年創業、英国の香水文化を築いたパイオニア
創業者はスペイン・メノルカ島出身のジュアン・フローリス。彼は1730年、ロンドンのジャーミンストリート89番地に「理髪店と櫛(くし)メーカー」を開業した。それがブランドの始まりだ。 ジャーミンストリートといえば、いまやメンズファッションの聖地。このコラムで取り上げたシャツのターンブル&アッサーなどの有力ブランドも、ジャーミンストリートに本店を構えることで知られる。 創業者のジュアンは、理髪店をオープンして程なく、フローラルや柑橘(かんきつ)の木々など、故郷・地中海の香りが懐かしくなった。そこで、渡英する前にフランス・モンペリエで学んだ調香の知識を生かし、理髪店の地下で香水を作り始めた。フレグランスブランド、フローリスの誕生である。 その後、店はエレガントな香水やグルーミング用品まで扱うように変化。同店は300年近くたったいまも変わることなく、本店としてフローリスファミリーにより経営されている。 宮廷文化で香水が普及したフランスと異なり、1730年代の英国で香水は目新しい存在だった。当時、香水商を始めたジュアンは、英国の香水文化を築いたパイオニアと言えるだろう。
■英の国王と女王、歴代君主がワラント認定
そうした歴史を持つフローリスだが、最初にロイヤルワラントを授与されたのは香水ではなく、創業とかかわる櫛で、であった。1820年、英国王ジョージ4世が「先のとがった滑らかな櫛」メーカーとして、このブランドとして最初のロイヤルワラントを授与。以来、次なる国王もしくは女王への君主交代があっても1度も途切れることなく、歴代君主を含む17人ものロイヤルファミリーからロイヤルワラントの認定を受けている。 現在は2つのワラントを保持。1つは2022年に亡くなったエリザベス2世から1971年に「香水」部門で授与されたもの。そして、もう1つは現国王チャールズ3世から1986年に「トイレタリー」部門で授与されたものだ(注:事業者側に重大な変更がない限り、事業者側はワラントを授与した王室メンバーが亡くなった時期から最長2年間使用することができる)。 なお、ワラントを認定した王室メンバーが健在であっても、1度授与されたワラントをずっと維持し続けられる訳ではない。そのあたりは、本稿最後に設けた、ロイヤルワラントの説明をご参照いただきたい。ワラントの認定を200年以上も受け続けている、このブランドの実力を改めてご理解いただけよう。