フレグランスブランド、フローリス エリザベス女王も愛用していた「香りの芸術品」の魅力
■エリザベス女王、フレグランスで唯一認定のブランド
ところで、フローリスはフレグランスブランドとして、エリザベス2世からロイヤルワラントを授与された唯一の存在というのはご存じだろうか。それゆえ人気フレグランスの中には、エリザベス2世にインスパイアされた香りがいくつもある。 その代表格が、2022年のエリザベス2世即位70周年の祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」を祝して登場した「FL オードパフューム プラチナム22」だ。 ローズ、バイオレットリーフ、オリス、クラリセージに紅茶などを合わせた香りは、女王陛下が暮らす宮殿の美しいガーデンがインスピレーション源。纏(まと)った瞬間、香り豊かなその庭園を散策するような、優雅な気分を感じることができる。 一方、「女王の花束」を意味する「ブーケ ドゥ・ラ・レーヌ」は、明るい春の日差しにふさわしい、エレガントで華やかな香りが特徴。フローリスが1840年、ドイツ生まれのアルバート公と結婚したビクトリア女王へのギフトとして創作したフレグランスだ。 実はこのフレグランスはエリザベス2世が即位50周年を迎えた2002年に、その記念として現代的なアレンジを加えて復刻された。時代を超えた気品とカリスマ的な魅力を宿すフレグランスは、いまもなお、このブランドのベストセラーの1つとして高い人気を誇っている。
■知識と技術を継承 社内調香師がすべての香りを創作
ここから、その魅力的なフレグランスの秘密を解き明かしていこう。フローリスは創業以来、顧客のリクエストに応じてパーソナルなフレグランスを調香するビスポーク(特別注文)で、目の肥えた王侯貴族たちから高い人気を集めていた。 それぞれのレシピはノートに細かく書き留められ、その知識と技術は今日まで代々のフローリスファミリーにより300年近く引き継がれている。フレグランスはすべて社内の調香師により創作されており、100%メイド・イン・イングランドだ。 現在は、9代目となるエドワード・ボデナム氏が調香責任者を務めている。ちなみに、ボデナム家との縁は1870年にフローリス家の子孫であるメアリー・フローリスがジェームス・ボデナムと結婚したことに始まる。 ジェームスとメアリーは1870年代に、メアリーの兄ジョセフからビジネスを引き継いだ。以来、フローリスはボデナム家によって現在に至るまで経営されている。フローリスファミリーが時代を超えて愛される香りを作り続けていることは、同ブランドの誇りでもある。 細部にまでこだわり、個性的でありながらもオーセンティックで気品あるエレガントなフレグランス。フローリス家は時代に応じて知識や技術をアップデートしながら、300年近くにもわたり、そのDNAを大切に引き継いできた。フローリスのフレグランスが、「香りの芸術品」と称される理由はここにある。