「送還されたら死ぬまで刑務所」“強制送還”と“ヘイト”のはざまで暮らす家族 川口のクルド人のいま【報道特集】
健康保険にも入れず、医療費は全額負担。約7万円の家賃も含めて、就労資格のある兄の支援で生活を成り立たせているが、日々の生活は厳しい。チョーラクさんは、クルド語とトルコ語まじりでこう嘆いた。 チョーラクさん 「本当に大変です。日本に来たけど、自由に動けないですし、何より働けない。自分の力で家族を養えないのが哀しい。生きているのか、生きていないのか分からないような状態です」 そんな不安定な環境で暮らす一家に、何がもっとも気がかりかを聞いた。夫妻は間髪入れず、日本語で「強制送還」と答えた。 実は、これまでの入管難民法では難民申請中は強制送還が停止される規定があった。しかし、その規定が“送還逃れ”に悪用されているとして、政府が去年、法律を改正。今年6月10日から3回目の申請以降は特別の事情がない限り、強制送還の対象となったのだ。 チョーラクさんは、3回目の申請の結果待ちが続いている。その立場は私も理解していたが、自宅での慎ましく穏やな生活をまさに目にしているだけに「強制送還」の言葉が不思議に響く。 ■「一生刑務所かも…」強制送還とヘイトにおびえる一家 一家が「強制送還」を恐れる理由は、生活が変わるからだけではない。去年の11月にトルコ政府が、埼玉での「ネウロズ」を主催した「日本クルド文化協会」とチョーラクさんを含む幹部6人のトルコ国内での資産を凍結した。トルコからの分離・独立を掲げる武装組織PKK=クルディスタン労働者党に資金を供与したというのが理由だ。 何度も会い、自宅にまで上げてもらっているのにこんな質問は失礼だろうか…と思いつつも記者として聞いた。「あなたは、テロリストですか?資金を提供しましたか?」チョーラクさんはちょっと苦笑いして、こう答えた。 チョーラクさん 「私たちはテロリストともPKKとも何のつながりもないのに…『クルド』を前面に出した活動をしたことでトルコ当局から狙い撃ちにされたのです。送還されたら、私は死ぬまでずっと刑務所に入れられると思います」