「送還されたら死ぬまで刑務所」“強制送還”と“ヘイト”のはざまで暮らす家族 川口のクルド人のいま【報道特集】
クルド人男性 「文化祭りだよ、いい加減にしろ!」 しかし、男は挑発的な言動をやめず、クルド人や日本人の支援者と断続的なもみ合いが続く。やや離れたところから男の動きを注視していたチョーラクさんは、困惑した表情を浮かべて片言の日本語でこうつぶやいた。 チョーラクさん 「ヘイトあるため、来られない人もいますんで。ハズカシイ」 ヘイト行為とは、特定の国の出身者であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとする一方的な言動を指す。政府は2016年、ヘイトスピ―チ解消法を施行している。 チョーラクさんの息子が、ヘイト行為の男、同胞、そして警察官を見る不思議そうな表情が印象的だった。なぜ今、クルド人にヘイトの矛先が向かっているのか。 ■「ドラえもんで日本語を学んだ」川口のクルド人家族 まだ少し肌寒い春の夜、チョーラクさん一家の川口市のアパートを訪ねた。私たちの分の夕食も用意していてくれた。メインはロールキャベツと焼いたチキン。独特の香辛料が、ピリっと辛い。床に布を敷いて、その上で食べるのがクルド式だという。 2歳で来日した長男はいま中学校3年生。小学4年生の二男とともに、日本語を問題なく操る。 長男 「ドラえもんとかアンパンマンを見て学んできて。それで日本語がぺらぺらになった。漢字ドリルも訓読みのところを見ながらよくちっちゃい頃勉強してたので、書くのもできます」 穏やかに夕食をとり、その後、子どもたちは宿題に取り組む。将来の夢を聞くと、長男はサッカー選手。次男は「悪い人をつかまえたい」から、日本の警察官だという。 トルコで生まれたチョーラクさんは、高校生のときに地元の「ネウロズ」に参加したことで当局に逮捕、暴行された。トルコを去る決意を固め、同じ事情から先に来ていた兄を頼って、妻と長男とともに日本に来た。観光ビザで成田空港から入国し、難民認定を申請したが2度却下されている。 ■「自分の力で生活できない…」 クルド人と「仮放免」 一家は在留資格のない「仮放免」で12年間暮らしている。同様の状況のクルド人は700人ほどいるとされる。就労は禁止され、埼玉県外への移動にも許可が必要。子どもの修学旅行なども例外ではないと聞いて、そこまでかと思った。