お家芸の固体燃料は転機に…国産ロケット70年の節目、新ステージの行方
H3、推進剤に液体燃料
一方で、JAXAと三菱重工業が開発した大型基幹ロケット「H3」は、推進剤には液体燃料を使い、大型の衛星も宇宙に運べるロケットとして2024年に産声を上げた。JAXAの岡田匡史理事は「技術の進歩を止めてはならない。そのために、H3は進化し続けるロケットである必要がある」と強調しており、現在も新技術の開発を続けている。 H3は25年度には日本初となる大型基幹ロケットで補助ロケットを搭載しないメーンエンジンのみで構成される「3―0形態」を打ち上げる予定で、その最終準備にも取りかかっている。さらに今後実証する技術に向けたデータ収集や、H3の次世代機につなげる2段エンジンの改良などを老若男女問わず多くの技術者が関わって開発を進めている。1つのロケットを作って打ち上げるだけでなく、H3の開発・製造・運用を通じて新技術の実証など次を見据えた仕組みを作ることで、人材育成や技術継承につなげる。 H3は年間6回の打ち上げを目指しており、政府系の衛星の打ち上げだけでなく海外からの受注も増えてきた。ゆくゆくはJAXAから三菱重工業へ移管し、商業化が本格化する。ただ日本以外にもロケットでの宇宙輸送を行っている国は多く、中には日本より打ち上げ費用が安い国のロケットもある。それであっても日本のロケットを選ぶ国内のユーザーは多い。海外に衛星を運ぶと時間とコストがかかるため国内の方が使いやすい。海外のロケットに衛星を搭載する場合、検査時に衛星の詳細な技術を見られる可能性が高いという。安全保障の面からも国産ロケットは必要であり、H3だけでなくイプシロンSやカイロスなどのロケットの開発にも期待がかかっている。
新興の参入も活発化
スペースワンだけでなく、ロケット開発には日本の宇宙ベンチャーが挑戦している。インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は、24年度以降の打ち上げを目指し、小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発を進めている。24年11月にはZEROを量産化するための電気・機構系部品の生産や試験拠点となる東北支社(福島県南相馬市)の建設を始めた。25年12月の稼働開始を予定する。新たな日本の宇宙輸送技術の確立に向けた動きが加速している。 また、AstroX(アストロエックス、同)は気球からの空中発射する方法で打ち上げるロケットを開発中。技術実証のために行った地上からの小型ロケットの打ち上げに成功し、高度10キロメートル級に到達した。25年度には宇宙空間に到達することを目指し、将来的に衛星を打ち上げるロケット不足の解消につなげる。 宇宙開発の歴史は長いが、宇宙ベンチャーなどの民間が参入することで新たな風が吹こうとしている。ロケット開発は70年を迎える。次世代の技術を見据えつつ、これまで培ってきたさまざまな技術を見直して引き継ぎながら新たな開発を進めることが求められるだろう。