サウジアラビアに誕生した「チームラボボーダレス ジッダ」をレポート。世界遺産の街に常設される巨大なミュージアムで彷徨い、遊び、新たな感覚を開く
「認識の革命」
「Light Sculpture」シリーズは、光による巨大な彫刻が生まれ、変化していく作品。たとえば海にできる渦は、周囲と同様の水でありながら、そこに独自の秩序が生まれることで渦となる。本作はそうした秩序が光のなかに生み出され、触れることができない光の彫刻が現れる。光の彫刻は一方的に眺めるだけでなくこちらの身体を飲み込むように広がり、感覚が揺さぶられる。チームラボ代表の猪子寿之は作品を通して「認識の革命」を目指していると語るが、そうしたヴィジョンが体感できる作品だ。「Light Sculpture」シリーズは麻布台のチームラボボーダレスにも展示されているが、そこからさらに改良が重ねられ、より没入感のある空間となっている。 「ランプの森」は、空間内に無数のランプが配置され、鑑賞者と他者の関係性に影響を受けながらランプの光が「連続性の美」を表現する作品。ランプの色は季節によって変化する。
描いて跳ねて、身体全体で遊ぼう
2階に上がると、自分で絵を描いたり、身体をダイナミックに動かしたりして遊べる作品が集まる「学ぶ!未来の遊園地」「運動の森」のエリアが。大人も子供も夢中になること間違いなしの空間だ。 「学ぶ!未来の遊園地」には日本でも大人気の《スケッチオーシャン》がある。訪れた人がその場で描いた魚たちを、作品空間のなかで泳がせることができるインタラクティブな作品で、描いた絵は「スケッチファクトリー」でTシャツやトートバッグなどのグッズにすることもできる。魚のなかでマグロは国境を超えて泳ぐことができるそうで、麻布台のチームラボボーダレスとここジッダのチームラボボーダレスとを行き来しているという。ここでもまさにボーダレスな仕掛けに驚かされる。 《こびとが住まう宇宙の窓》は、小人たちが住む世界にデジタルのスタンプやペンによって絵を描いたりコミュニケーションを取ったりすることができる作品。 「運動の森」は「身体で世界を捉え、世界を立体的に考える」をコンセプトに、脳の海馬を成長させ、空間認識能力を鍛える新しい「創造的運動空間」。複雑で立体的な空間で、身体を思いっきり動かしながらインタラクティブな世界に没入する。 たとえば《Antigravity Universe - Ovoids》は、光る大きな風船状のオブジェが空間に浮かび、それを手でタッチしたり上へ押し上げたりすると光の色が変化する。《あおむしハウスの高速回転跳ね球》は、足元に広がる数パターンの色の球体のなかから同じ色のものを踏みながら部屋の奥へと渡っていき、うまくできるとかわいいアオムシが足元に生まれる。《マルチジャンピング宇宙》はトランポリン状になっている床面で跳ねるとそこに宇宙の渦が生まれる。 思いっきり遊んで探検し、脳も身体も疲れたら「EN TEA HOUSE」へ。ここはお茶と抹茶アイスが提供されるティーハウスだが、こうしたメニューも作品の一部。一服の茶を点てると、そこに光の花が生まれ咲いていく。しかしお茶碗を手に取り飲もうとすると、器の中の花は散っていく。アイスクリームの器からも植物が芽吹き、蝶が集まる。