「お前のせいで負けた」男子バレー小野寺太志に届いた誹謗中傷…それでも“笑って消化”した理由「辞めたいなんて…1ミリも思わなかった」
「パスがずれる」「トスが合わない」
パリ五輪の直前、小野寺はポーランド遠征の移動時に腰を負傷していた。ぎっくり腰だった。チーム練習から外れ、加わったのはリハビリも兼ねたトレーニングのみ。不安はあったが、スタッフ陣を信じ、来たる日に向けてやるべきことに集中した。そのおかげもあり、強化試合のポーランド戦では高橋健太郎が負傷したことで、予定より早く実戦復帰を強いられたが、コートに入れば腰に痛みを感じることなく十分動くことができた。 コンディションへの不安は消えた。だがチームに目線を向ければ、周囲からの「メダル候補」というプレッシャーがのしかかっていた。しかも、初戦が行われるのは異例の朝9時。パリに入ってからはコンディション調整を意識しなければならず、気が休まる暇もなかった。その影響は主力組に顕著で、主力組のAチームとリザーブのBチームで試合形式の練習を行えば、たいていBチームが勝った。腰の状態を鑑みてBチームに入ることが多かった小野寺は、その様子を客観的に見ていた。 「普段なら落ちないボールが簡単に落ちるし、パスがずれる、トスが合わない。些細なことに過敏になっていた。小さいストレスとかイライラが充満しているのは伝わってきました」 特に深刻だったのが石川祐希の不調だ。 ドイツ戦にフルセットで敗れたことで、連敗を喫すればメダルどころか予選敗退もある。追い込まれた状況で迎えた2戦目のアルゼンチン戦は、チーム3位の12得点を上げた小野寺の活躍もあって勝利を収めたが、一方の石川は11得点止まり。なかなか調子を上げられずにいた。 小野寺は選手村で同部屋だった石川をあえて茶化した。 「俺12点、お前11点。サイドなのに、俺より点獲ってないじゃん」 その言葉に石川も「ほんとだよ」と笑う。同級生でアンダーカテゴリーから長い時間を共に重ねてきた。主将になってからも石川は「僕は太志がいい」と小野寺との同部屋を希望するほど、信頼を寄せる存在でもある。 「調子が上がってこないのは自分が一番わかっているのに、そこで『何でダメなんだよ』とか言う必要ないじゃないですか。それにそもそも、イタリアであれだけの経験を積んできた祐希に、僕が言うことなんてない。祐希なら上がってくるし、たまたま今調子が悪いだけで、それなら他の選手が決めればいい。だからもっと楽に行こうよ、という気持ちでしたね」 小野寺の見込み通り、準々決勝のイタリア戦で石川は完璧なパフォーマンスを見せた。鮮やかな復調で得点を量産し、2セットを連取。だが第3セット、マッチポイントを握りながらあと1点が獲れず、フルセットの末に日本は敗れた。
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