禁断の美声を持つ「カストラート歌手」ファリネッリの魅力を今に伝えるオペラ作品【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ニコラ・ポルポラ オペラ『シファーチェ』 禁断の美声カストラートの魅力を今に伝える
今日1月24日は、イタリアのカストラート歌手ファリネッリ(1705~82)の誕生日です。 3オクターブ半の声域と、驚異的な技術に裏打ちされた美声によって、しばしば女性たちを失神させたという逸話が残されるファリネッリは、史上最も名高いカストラート歌手です。 「カストラート」とは、かつてヨーロッパに普及した去勢された男性歌手のこと。つまり、美しいボーイソプラノを維持したまま成人男性の体になることによって得られる禁断の美声の持ち主。その美しさはまさに人間離れしていたと伝えられます。興味のある方は、彼の生涯を描いた1994年の映画『カストラート』をご覧ください。 “神の声”とたたえられたファリネッリは当然作曲家たちをも魅了。同時代の作曲家ポルポラやハッセが彼のためにさまざまな作品を手がけています。「カストラート」の存在しない現在は、「カウンターテナー」や「メゾソプラノ」がその作品を歌うことによってすばらしさを伝えています。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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