新一万円札の肖像・渋沢栄一 設立に関わり現存する企業は167社
業種別:製造業と金融機関が半分を占める 明治期の日本経済の勃興を支えた業種が多数
業種別では、製造業が49社で全体の約3割を占めた。さらに細かい分類でみると、化学工業(10社)を筆頭に飲食料品・飼料製造や、重工業が含まれる一般機械器具製造などが多くみられる。 また、金融・保険が35社で続き、鉄道事業が大半を占める運輸・通信(22社)も続いた。また、電気・ガス事業者(14社)などインフラ関係の業種が多く見られる。渋沢栄一が活躍した明治時代は日本が資本主義経済の礎を固める時期であり、その当時に求められていた事業を次々に興したことが、現存している企業からも読み取れる。
業歴別:業歴100年以上の「老舗企業」は110社 業歴トップは創業350年超の三越伊勢丹
業歴別でみると、創業・設立から100年を超える「老舗企業」は167社のうち110社を数えた。合併・被合併などを繰り返すなかで会社新設となり業歴が浅いケースも見られるが、多くは渋沢が活躍した時代に興された企業が今もそのまま続いている。平均業歴は111.4年だった。 そのなかで、最も業歴が長いのは三越伊勢丹(1673年創業)だった。当社は三井高利が呉服屋として創業した「越後屋」が祖業だが、その後1904年に百貨店へ姿を変えた三越呉服店に渋沢が大きく関わっている。また、渋沢が長く相談役を務めた清水建設は、2代目当主の清水喜助の時代に渋沢邸を建設したことでも有名。渋沢邸は24年1月に江東区指定有形文化財に指定された。
受け継がれる渋沢栄一の想い、企業の存在意義を見直す良いきっかけに
経済による国づくりを使命とした渋沢栄一が関わった企業は、今もその多くが存続し日本経済を支える。社会福祉事業にも注力した渋沢は、正しい志・道徳観に基づいて世の中のために働くことで利益を得られるとする「道徳経済合一説」を重んじたことでも知られる。企業を「社会の公器」と表現し公益を追求したことの先見性は、現代においてこそ評価されている。 社会のために尽くそうとした渋沢の想いは、企業の存在意義を示す「経営理念」にも込められている。社会、貢献、発展、客(顧客)、創造などの言葉が頻出し、広い視野を持って未来を創ろうとする心構えが表れている。 近年はサステナビリティが重要視されるなか、企業の存在意義に基づいた、いわゆる「パーパス経営」にも注目が集まっている。新一万円札の肖像に起用される大きな節目に際し、渋沢栄一の考えに触れることは自社の事業価値を再認識する良い契機となるだろう。