辺野古の地盤改良工事、完成は33年ごろか 総事業費膨らむ可能性も
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設計画で、防衛省沖縄防衛局は28日、米軍キャンプ・シュワブ東側の大浦湾で、埋め立て予定海域に広がる軟弱地盤の改良工事に着手した。今後、約7万1000本のくいを順次、海底に打ち込み、地盤を固める。最深部が海面下90メートルに達する軟弱地盤の改良工事は国内に前例がない。移設計画に反対する玉城デニー知事は実現性や環境保全策に疑念があるとして、工事の中止を求めた。 【写真で見る】そもそも…辺野古ってどんなところ? 政府は2023年12月28日、地盤改良工事に必要な設計変更の承認を知事に代わり、代執行で承認。24年1月から大浦湾の埋め立て予定地を囲う護岸工事などを進めてきた。この日はくいを打ち込む際に海底のヘドロが舞い上がらないようにするため、海底に敷く砂を作業船から管を通して投入する様子が確認された。防衛省は28日、X(ツイッター)で午後2時ごろに着手したと伝えた。 沖縄本島東側の沖には、海底に直径2メートルほどの砂のくいを打ち込む作業船が複数待機しており、準備が整い次第、大浦湾に移動するとみられる。 沖縄防衛局などによると、軟弱地盤が広がる海域は約66ヘクタールで、埋め立て予定海域(152ヘクタール)の4割超を占める。今後、地盤改良と埋め立てが一部並行して実施され、順調に進んでも、飛行場施設を含めた全体の完成は33年ごろ、米軍への提供手続きも含めた移設の完了は36年以降とされる。 県は、軟弱地盤の最深部が海面下90メートルに達するにもかかわらず、国内企業による改良工事の施工実績が海面下70メートルにとどまることから「技術的な不確実性が高い」と主張。環境保全策も不十分だと指摘している。 政府が約9300億円と見積もる総事業費も、県は「大幅に膨らむ可能性がある」としている。埋め立ての開始(18年12月)から約6年がたった今年11月末時点で投入した土砂量は計画全体の16%にとどまる一方、23年度末までに総事業費の57%に当たる5319億円を支出しているためだ。 工事着手を受け、玉城知事は28日、沖縄市で報道陣の取材に応じ「移設では普天間飛行場の一日も早い返還にはつながらない。工事を中止し、対話による解決を政府に求めていく姿勢は変わらない」と語った。 一方、防衛省は、地盤改良の工法は羽田空港や関西国際空港の工事などで実績があり、構造物の安定性は十分に確保できるとする。中谷元防衛相は14日、辺野古の工事現場を視察し、報道陣に「問題なく埋め立て地を完成させ、飛行場を完成できる」と強調。事業費の膨張の懸念については「引き続き経費の抑制に努める」と述べた。環境保全策についても、防衛省は「十分配慮している」としている。【比嘉洋、喜屋武真之介】