「夜行新幹線」は実現できるか? 高速バスとの競合、貨物新幹線との連携! 可能性と課題を考える
貨客混載で解決する需要
反対意見はあることは理解している。1964(昭和39)年の東海道新幹線の開業以降、利用者数や本数が増加し、深夜から早朝にかけてのメンテナンス作業の重要性が高まっている。そのため、深夜の騒音や振動の問題があり、トラブルがない限り、0時から6時の間に旅客新幹線を運行することは事実上難しくなっている。安全や環境への配慮から、夜行新幹線を導入する必要はないという意見を持つ識者も多く、否定的な意見は根強い。 また、夜行新幹線の需要についても不確実性が指摘されている。例えば、夜行高速バスが混雑している路線もあるが、1台に30人程度しか乗れず、運行するバスが1~2台であるため、夜行新幹線で確実に需要を得られるのかという疑問も存在する。 この不確実性を解消するためのひとつの提案として、同じ輸送手段で貨物と旅客を一緒に運ぶ 「貨客混載」 が考えられる。2024年11月にはJR東日本が貨物新幹線の導入計画を発表し、専用の貨物車両を開発して高速で定時運行を目指している。高速性と定時性が評価されれば、他のJR各社にも波及する可能性がある。 この貨物新幹線と夜行新幹線を組み合わせることができないか、と筆者は考えている。これまでも貨物新幹線を利用した夜行列車の計画はあったが、今回は本格的な発表となり、夜行新幹線の導入の好機であるとも思える。新幹線のパラダイムシフトの時期が来ているのかもしれない。 さらに、競争力の低さとコスト面も問題として挙げられる。1973年には寝台設備を備えた961形試作電車が製造され、夜行新幹線は構想段階で止まったが、確実に進展していた。保線作業なども片側交互通行を基本にし、本数を限定して柔軟に運用すればよいという意見もあった。 しかし、当時は在来線の夜行列車が存在しており、競争力で在来線に負けるという意見も多かった。投資コストを回収できないという意見もあったが、時代が変わり、現在は夜行列車がサンライズ2路線だけとなった。インバウンド需要の高まりや、宿泊料金が下がる気配がなく出張も難しい状況が続くなか、夜行新幹線はインバウンドにとっても魅力的な選択肢となり得るかもしれない。環境の劇的な変化を踏まえ、競争力やコストのメリットを再評価する価値がある。