現実味をおびる2028年有人火星探査と、マスクがトランプを支持する理由
マスクを包囲するオーバーレギュレーション
スターシップのタンクを満タンにするには4機のタンカーが必要であり、それらを連続的に打ち上げる必要があるが、メカジラがそれを可能にする。打ち上げから7分以内に地表へ帰還する第1段は、メカジラにキャッチされるとすぐさま推進剤が充填され、1時間以内に再度打ち上げられる。 こうしたシステムが1000倍の効率化につながるかは疑問だが、今回のテストの成功によってマスクは「確信を得た」とツイートしている。 ■マスクを包囲するオーバーレギュレーション 火星探査はスペースXのプライベートミッションだが、スターシップはNASAが主導するアルテミス計画において、クルーを月面に届ける有人月着陸機にも選定されている。 現状、その打ち上げは2026年9月を予定。それまでに第2段宇宙船のキャッチや、地球周回軌道上での推進剤補給、有人フライト、宇宙船オリオンとのドッキングテストのほか、月面への無人着陸など、難易度の高い実証テストを数多く実施する必要がある。 しかし、そのスケジュールは大幅に遅れている。その遅延は開発作業だけではなく、規制当局によるオーバーレギュレーション(過剰規制)にも一因がある。 飛行テストを行うには、その都度、米連邦航空局(FAA)の許可が必要となる。スペースXは今回の飛行テストを9月中旬に実施可能だったが、FAAから認可が降りず10月13日にずれ込んだ。同社は年内に6~9回のテストを予定していたが、こうした状況では到底予定をクリアできず、マスクは「スペースXは政府が書類を処理するよりも速くロケットを製造できる」と、FAAの体制を批判している。 これと並行してFAAは、スペースXに対して63万3000ドルの罰金を課している。6月に実施された飛行テストIFT 4において、同社が規制を十分に尊重しなかったというのがその理由だ。これに対してマスクは「行き過ぎた規制」と非難し、FAAを訴えることを表明した。 また、マスクは米国環境保護庁(EPA)とも対立を深めている。ロケット打ち上げの際、衝撃を低減するために射場下のプールに大量の水がまき散らされるが、その水が環境汚染を引き起こす可能性があるとして、EPAは米国清浄水法違反を指摘。結果的に9月10日、スペースXに14万8378ドル(約2225万6700円)の民事罰を課すとともに、それを支払うまで許可は出さないとした。