アイオワ大接戦で注目 米大統領選の「党員集会」と「予備選挙」って?
アイオワが生み出すモメンタム
このアイオワ党員集会で勝利すると、一気に全米的な注目を集め、その後の選挙戦の「モメンタム」(勢い)を生み出します。そのため、次のニューハンプシャー州予備選とともにアイオワ州党員集会は、特別な存在となります。 アイオワの“顔が見える”人間関係が生み出した典型的な大統領が1976年のジミー・カーターです。カーターはそれまで全米的には全く無名で、「ジミーって誰」と皮肉を込めていわれていたのですが、アイオワ州でどのライバル候補よりも長く地道な選挙活動を行った結果、党員集会を制し、一気に全米的に名前が知られるようになりました。2008年大統領選挙でも、アイオワでの勝利をきっかけに、オバマ支援が一種の社会運動に昇華しました。アイオワ州党員集会直前のオバマの世論調査の支持率は、ヒラリー・クリントンに後塵を拝していたのですが、若者を中心とした熱気がアイオワでの勝利につながりました。
党員集会は理想的なのか?
ただ、党員集会が理想的かというと、そうとも言い切れない部分があります。というのも、そもそも党員集会にしろ、予備選にしろ、投票率は3割程度です。3割に満たない中で、参加する人は非常に政治に熱心な人、はっきり言えば、民主党ならリベラル、共和党なら保守と政治的にはかなりの党派性がある人です。人種的マイノリティが急増するアメリカにあって、アイオワ州は人口の9割以上が白人で、しかも極めて宗教保守的な風土があります。共和党の場合、近年選ばれた候補者は、今年のクルーズだけでなく、2012年のサントラム、2008年のハッカビーと一般の共和党支持者よりもかなり宗教保守的な傾向のある候補ばかりです。 さらに、アイオワに限らず、どこの党員集会でも候補者支援のスピーチを買って出るようような「熱意をもって説得する」人はどうしてもその地域の政党のボス的な存在の人が多くなります。2008年のオバマのような若者が熱をもって支援するようなケースもありましたが、どちらかといえば、政党の幹部の意向が極めて強く、押し切られることも一般的です。 1970年代後半に、代議員選出を民主化するための改革(マクガバン・フレーザー改革)があったのですが、その時にやり玉に挙がったのが、この党員集会での政党のボスたちの存在でした。ボスたちが「葉巻の煙が充満するような部屋」の中で、候補者を選んでいくのが、党員集会であり、まさに旧制度の象徴でした。 この改革を経て、民主主義的でないとする党員集会をやめて、通常の選挙である予備選に移った州が急増し、現在に至っています。それでも“顔が見える方”を選択し、党員集会を残している州も少なくないほか、一つの州で別の日程で党員集会と予備選を行う州もあります。