新型ポルシェ・カイエンGTSはV8の魅力を存分に味わえる1台だった マルチシリンダーゆえの高性能SUVに迫る
レスポンス良好
パワートレインは前述の通り。一方でシャシーも、細かい部分まで手が入れられている。一番のハイライトはターボGTから流用されたフロントアクスルピボットベアリング。これによりネガティブキャンバーが他グレードより0.58度大きくなっているという。狙いは、オンロードでのフットワークの良さである。サスペンションは10mmローダウンの専用品で、2チャンバータイプとされたアダプティブサスペンション、PASM、PTV Plusなどが標準装備される。試乗車は、更にリヤアクスルステアリング、可変スタビライザーのPDCCまでフル装備されていた。 試乗したのはドイツ・シュトゥットガルト近郊で、軽いワインディングロードもアウトバーンも試すことができた。まず動力性能は、速度域の高い環境で乗っても十分以上の余裕を感じさせた。感心させられたのは、絶対的な速さよりもほしいときにほしいだけの力をすぐに発揮できるレスポンスの良さで、コーナー立ち上がりから高速道路の導入までストレス知らず。しかも、そこに硬質なV8サウンドが伴うのだから、どんなシチュエーションでも快感に浸ることができる。 フットワークも、やはり小気味良いレスポンスが際立つ。決して過敏なわけではない。あらゆる操作に即座に反応し正確は反応が返ってくる、極上の一体感を味わわせてくれるのだ。拡大されたネガティブキャンバーの効果も、きっと小さくないのだろう。とりわけSPORTモードでの狙ったラインにぴたりと乗せられるターンインには、惚れ惚れさせられた。 しかも乗り心地だって悪くない。いや、積極的に良いと評せるものだ。これは新しいエアサスペンション、エアボリュームの増したタイヤ、そしてそれらの見事な調律ぶりの相乗効果と言えるだろう。 最新のカイエンGTSは、これぞGTSという走りを、しっかりとアップデートされたかたちで味わわせてくれた。ターボGTや素のターボが無くても、これなら寂しさは無い。 先日ポルシェは、BEV(バッテリー式電気自動車)化される次期型カイエンの開発が順調に進んでいること、そして同時に、PHEVや内燃エンジン車についても引き続き力を入れていくことをアナウンスした。BEVも楽しみではあるが、こうした内燃エンジンのポルシェならではの、まさに打てば響くようなスポーティさ、今後もまだまだ味わい続けることができそうなのは嬉しい。
文・島下泰久 編集・稲垣邦康(GQ)