今だからこそ考えたい「大事なデータの管理の仕方」--独ITベンチャー企業の主張から考察する
自分たちの大事なデータをどう管理すべきか 「今や、データは“新しい石油”であり、今日の経済をけん引する可変資源である。私たちの経済はもはやこの資源に依存している。そうした中で、私たちの大事なデータは今どこにあるのか。ふと見渡してみると、私たちのデータは、ほんの数社のグローバルなビッグテック企業が所持し管理していることに気づく。この状態で懸念されるのは、そうしたビッグテック企業によるデータの取り扱いにおいて、それぞれの企業の出身国のルールが適用されることだ。これは米国にも中国にもいえることである。ビッグテック企業は、私たちのデータに対して絶大な権力を持つ存在となりつつある。私たちは自分たちの大事なデータを一握りのビッグテック企業に管理されることを望んでいるのだろうか。こうした権力の集中は、私たちのプライバシーやセキュリティに重大なリスクをもたらすのではないか。Nextcloudのミッションの核心はここにある」 さらに、こう続けた。 「Nextcloudはオープンソースによって透明性を担保し、プライバシー、コンプライアンス、セキュリティという重要な側面に焦点を当て、ビッグテック企業に代わる強固な選択肢として現地の規制を順守しつつ、ユーザーデータの保護を最優先として独立したデータ管理を可能にするプラットフォームだ。これにより、お客さまはセキュリティやプライバシーに妥協することなく、イノベーションを促進することができるようになる」 Karlitschek氏がビッグテック企業として名を挙げたのは、いわゆる「GAFAM」だ。「私たちは自分たちの大事なデータを一握りのビッグテック企業に管理されることを望んでいるのだろうか」との同氏の問いかけは、今だからこそ誰もがよく考えてみるべきだろう。 それにしても、基本的にオンプレミスでデータを管理する仕組みなのに、なぜNextcloudなのか。同社のソリューションが「次なるクラウド」とはどういうことか。そこにKarlitschek氏の強いこだわりがあるのではないか。そう感じたので単刀直入に聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。 「Nextcloudと命名したのは、アンチクラウドというわけでなく、クラウドの利用についてもっと注意深く考えていこうという強い思いからだ。クラウドは今や、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどとさまざまな利用形態が混在するようになってきている。そうした中で、自分たちの大事なデータをどのように管理し活用していけばよいのか。データ保護の観点からさまざまな利用形態におけるメリットとリスクを深く理解する必要がある。そのための次世代のクラウドテクノロジーという思いを込めたのが、Nextcloudだ」 冒頭でも述べたが、クラウドをめぐる話ではつい利用形態ばかりに目が行きがちだ。しかし、まず考えるべきなのは自分たちの大事なデータをどうしっかりと管理していくか、ではないか。Karlitschek氏のメッセージには説得力があった。 「データは宝の山」と言われるが、私たちはその価値を十分に知って自分たちでしっかりと管理できているだろうか。そう改めて感じさせられた会見だった。