浦和実に初の甲子園呼ぶ“超異色”足上げ投法 中1日で完封の石戸颯汰、マウンドで見せたわずか半歩の創意工夫
秋季関東大会で準決勝進出、来春選抜出場へ大きく前進
第77回秋季関東高校野球大会は28日、横浜市のサーティーフォー保土ヶ谷で準々決勝2試合を行い、第2試合では浦和実(埼玉)がつくば秀英(茨城)に2-0で快勝。春夏通じて初の甲子園出場をほぼ当確とした。1回戦に続いて先発した石戸颯汰投手(2年)が、中1日で4安打完封。チームの歴史を塗り替える快投の裏には、たった“半歩”の創意工夫があった。 【画像】「まさかこんな展開に」「なかなかの衝撃!」 負けを喫した県強豪、試合後に涙する実際の写真 左腕の石戸は、176センチの身長をダイナミックに使いきるような独特の投球フォームが特徴的。右足をスパイクが顔の前にくるほど高く上げ、一旦沈み込んだところからオーバースローで腕を振る。「結構疲れる投げ方です」と本人も苦笑いするほどだ。リリースの瞬間までボールを打者に見せないことを意識している。 軟式でプレーした中学時代から、打者のタイミングを外す投げ方を追求するうちに、気が付けばこのフォームになっていた。26日の1回戦では、宇都宮工(栃木)相手に7回1失点。そしてこの日も、時速120キロほどの直球につくば秀英の打者は皆、差し込まれていた。最後の打者を三邪飛に打ち取った瞬間は、大喜びのナインをよそに冷静だったものの「無失点なのが大きかった。けっこう、うれしいです」と試合後は表情をほころばせた。
降雨のため、第1試合の開始時刻が3時間遅れた。浦和実業の第2試合は、午後3時43分開始。後半は照明が灯される時間になっても、グラウンドには影響が残っていたという。「足場が悪い中だったので、そういう部分も意識しました」。誰も参考にできない投球フォームだからこそ、自身の感覚を生かした微修正が欠かせない。 足を大きく上げるため、片足でバランスを取る時間が長いフォームに、緩い足元は影響が大きい。「堅いところが出てくるまでマウンドを削るのと、歩幅を少し小さくしました」。ふだん踏み出しは6歩のところを、半歩だけ狭めてのマウンド。3回には打球が左太ももを直撃し「結構痛かったです」というが、淡々と投げ続けた。辻川正彦監督も石戸を「100点の投球ではなかったと思います。調子も抜群ではない。ただ丁寧に投げていましたね。執念です」と称えた。 浦和実にとっては、1975年の創部以来49年目で初の甲子園が現実的なものとなってきた。石戸は甲子園のイメージを「一流の球児が集まる場所」と表現する。ただその前に、挑まなくてはいけない相手が待つ。準決勝の相手は横浜だ。「チャレンジャーの気持ちです。まだまだ直すべき部分はある。次からも一戦一戦、取っていくだけ」と石戸。独特フォームの完成度も高めながら、憧れの甲子園に近づいていく。
THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori