婚活アプリは、自分の「オンナの価値」を確認・安心するための場所⁉ 遊び半分だった35歳女性が、なぜ焦って結婚したくなったのか?
しつこい誘いに負けてホテルへ行ったものの…
次に出会ったのは、インスタレーション(空間全体を作品として体験を通して芸術)を手がける40代後半のアーティスト。何度か食事をしましたが、彼は口数が多いほうではなく、話をしていてもあまりおもしろくはありません。外見もK美さんの好みではありませんでしたが、「アーティストとつきあう機会なんてなかなかないし」と、おつきあいをすることにしました。 つきあい始めてからも、やはり会話は弾まず、一緒にいてもあまりおもしろくはありません。会うたびにホテルに誘われましたが、そんな気持ちにはなれなくて、K美さんはずっと断っていました。 けれど何度も断り続けるのも面倒になり、つきあって半年ほどたった頃、初めて彼の誘いに応じます。それをきっかけに気持ちが高まることはなく、むしろ「ゲンナリして」さらに気持ちが冷めたK美さんは、彼からの連絡をしばらくスルーしていました。 毎日10回近くかかってくる電話に根負けして、ようやく電話に出たのは1週間ほどたってからのことでした。 「おつきあいはできない」とK美さんが告げると、「それなら、どうしてホテルへ行ったんだ」と彼は怒りを露わにします。「あまりにもしつこかったから」とは言えず、ひたすら謝罪を繰り返して電話を切りました。 K美さんが女子会でこのエピソードを披露すると、友人たちは口を揃えて「どうしてホテルへなんて行ったの?」と彼と同じことを言ったそうです。
「人生のパートナーがほしい」と切実に願ったきっかけ
その後も、K美さんは何人かの男性に出会いますが、真剣におつきあいするまでには至りませんでした。 K美さんの婚活がうまくいかない理由は、本気で結婚したいと思っていないからです。婚活向けのアプリに登録すれば少なくない数の「いいね」がつくし、男性からのアプローチもそれなりにあります。K美さんにとって、婚活の目的は「自分がその気になれば結婚できるだろう」という安心材料と、女子会で披露するネタ探しになっていました。 「このままひとりで生きていくのも悪くないかもしれない」そう思い始めていたK美さんの気持ちが変わったのは、母親の病気がきっかけでした。 K美さんはひとり暮らしをしていますが、実家とは電車で1時間ほどの距離。家を出てからも予定のない週末にはよく実家に帰っています。子どもの頃から仲がいい母親は、60代になったばかりで見た目も内面も若々しく、他愛もない話をしたり、一緒に買い物に出かけたりと、昔からの友人のようにつきあっています。 そんな母親にガンが見つかったのです。幸い初期の乳がんで、治療をすれば命にかかわる心配はなさそうです。 けれど、初めて直面する親の大きな病気は、K美さんの心境に大きな変化をもたらしました。「親は、ずっといてくれるわけではないんだ」頭ではわかっていたつもりでも、実感として受け止めたのは初めてのことです。「両親がいなくなったら、私はひとりぼっちになってしまう」 K美さんは、「ともに人生を歩んでいけるパートナーがほしい」と初めて切実に願い、私のところへ相談に訪れました。 【前編】では、最初はかっこいいと思ったもののときめかず、関係を進展させることはなかったクリエイティブ職の男性たち。自分の女性としての価値を確認するためにしているような面もあったK美さんの婚活でしたが、母親にがんが見つかったことで本気モードに! ▶つづきの【後編】では、働く女性にありがちな、理想の相手に出会えない理由についてお話いただきます。
アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラー 伊藤友美