25年春闘の賃上げ目標実現、「公正な分配」が課題-金属労協の金子議長
好調な春闘を反映して今年の基本給が順調に伸び、実質賃金は6月に27カ月ぶりに前年比プラスに転じた。もっとも、消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)は22年以降、日銀が目標とする2%を上回る伸びが続く中で、物価高に負けない賃金上昇が定着するまでには至っていない。
構造的な賃上げ実現には適正な価格転嫁が可能となる環境整備は不可欠だ。政府は21年に価格転嫁円滑化施策パッケージをとりまとめるなど取引の適正化を後押してきているが、金子氏は取り組みの加速を求めている。「5年、10年とだらだらやっていたら改善されない」とし、来年3月の価格改定までには相当数の企業が労務費の価格転嫁を実現できている状況にしなければいけないと語った。
好循環の手応えなし
賃金と物価の好循環実現を目指す日銀は、経済・物価が見通しに沿って推移すれば利上げを続ける方針を示している。植田和男総裁は11月の日本経済新聞とのインタビューで、利上げを判断する上で賃金動向と、賃金の価格への転嫁の動向が大事だと述べていた。
金融政策に関して金子氏は、現段階では好循環に至ったという手応えはなく、今のタイミングで利上げをすれば「消費マインドがプラス方向に動くのかどうかというと、すごく難しい」との認識を示した。その上で、好循環になるサイクルの構築が最優先であり、日銀のみならず、政府、企業、労組がそれぞれ好循環実現に向けて行動することが重要だと語った。
国際情勢が不安定化する中で、金子氏は11月の米大統領選で勝利したトランプ氏の政策に懸念を示している。「米国第一主義」を掲げるトランプ次期米大統領は保護主義的な政策を推進する構えで、カナダやメキシコ、中国に対しては既に関税を強化する方針を表明した。
金子氏は、特に自動車産業にとって中国の景気減速が足かせとなる中で、米国市場が稼ぎ頭となってきたと指摘。トランプ氏が関税を引き上げた場合、「モノの流動性自体が止まり、多岐にわたって影響を与えかねない」と語った。金属労協に加盟する自動車大手5社のうちSUBARU(スバル)は世界販売のうち7割を米国市場が占めている。