相続税対策として子どもたちへの贈与を検討しています。無駄遣いしないように、子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑は私が保管してもいいですか?
相続税の税務調査で、よく名義預金が問題になります。子どもたちへ贈与したつもりが、親の相続財産と認定されトラブルに発展します。名義預金とは何か、名義預金と認定されないためにはどうしたらよいか、ポイントを解説します。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
名義預金とは
親が子ども名義の銀行口座に、年間110万円を入金したとします。贈与税の基礎控除は110万円なので、年間110万円までの贈与であれば、子どもに贈与税は課税されません。例えば、年間100万円を子ども名義の銀行口座に入金すれば、10年間で子ども1人あたり1000万円の現預金を無税で移転でき相続財産を減らすことができます。 しかし、親が子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑を親が保管しているケースでは、この口座に入金しても実質的には贈与の実態はないとみなされます。 つまり、「名義預金」とは「贈与したつもりの預金」のことをいいます。形式的に親から子へ現預金を移しても、法律上、贈与は成立せず、被相続人(親)の相続財産として相続税の課税対象になります。
名義預金と認定されないためのポイント
相続税法上、贈与について、特に定義はなく、基本的に民法の規定によります。贈与は、単独行為ではなく契約です。一方が金銭などを無償で相手方に与える意思を示し、相手方が受諾することによって成立します(民法549条)。 したがって、子どもに贈与する場合、子どもがその事実を知らないと贈与は成立しません。つまり、親が子ども名義の銀行口座を開設し、通帳と印鑑を保管している状態で入金しても贈与は成立しません。 名義預金と認定されないためには、以下の対応をとりましょう。 (1) 毎回、贈与契約書を作成して、署名・捺印をする。より確実性を高めるために公正証書にする (2) 子ども(受贈者)は、自分の作成した振込口座の通帳・印鑑を自身で管理・保管する (3) 贈与金額は、親(贈与者)の銀行口座から子ども(受贈者)の口座へ振り込む (4) 110万円を超える贈与は、子ども(受贈者)自身の資金で贈与税を支払う (5) 子ども(受贈者)は通帳のお金を活用する 実態も考慮されますので、例えば、受贈したお金が長期間一度も使われていないケースなどでは、他の対応を行っていたとしても「名義預金」と認定されるリスクが残るため、子ども(受贈者)は通帳のお金を活用するようにします。活用方法のひとつとして、生命保険を活用すれば無駄遣いが防げます。