アウトドアプロダクツのデイパック「452U」が 物語る、「不変」という価値
我々の身の回りにある、あらゆるプロダクトは日々進化を競っている。代表的なアイテムがバッグだ。超軽量の防水素材が使われたり、デジタルガジェットを収めるための多くのポケットが設けられたりしてきたが、なかには変わらないバッグだってある。
たとえば、アウトドアプロダクツの定番「452U」。世界中で愛されるアメリカ生まれのデイパックは、1970年代に誕生して以来、デザインや素材、製法といった基本設計がほとんど変化していない。なぜ変わらないのか? その理由を探るべく、伊藤忠商事株式会社でアウトドアプロダクツを担当する板坂未夢さんに話を伺った。
ブランドのルーツはアウトドア用品の百貨店
「452U」の魅力は、アウトドアプロダクツというブランドの成り立ちに紐づいている。 「アウトドアプロダクツは、1973年にアルトシュール兄弟によって、アメリカの西海岸で設立されたブランドです。彼らの父親はロサンゼルスで『The Famous Department Store(FDS)』というアウトドア用品の百貨店を経営していました。当時は幅広いアウトドア用品を扱うショップは珍しく、店にはプロの登山家や冒険家が足繁く訪れていました。そのうち彼らは『目の肥えたアウトドアのプロたちが、普段の生活で気軽に使えるギアを作りたい』と思うようになり、店の一角にあった工房でバッグやレインウエア、靴などを作り始めたのです」
人件費の問題を解決するために考案されたシンプル構造
「452U」の本体はたった2枚の生地でできている。フロントからボトム、両サイド、背面を構成する大きな生地が1枚と、天面を覆う横長の生地が1枚というシンプルな構造。 あとはここにジッパーやショルダーストラップ、ブランドタグ、あらかじめ組み立てられた外ポケットをつければ完成だ。
作りこそ簡素になったが、品質はかえって向上した。生地に通常のナイロン生地の何倍もの強度を持つデュポン社(現インビスタ社)製コーデュラナイロンを使用することで、卓越した頑丈さを実現している。さらにYKK製のダブルプルナイロンコイルジッパーによって開閉もいっそうスムーズな仕様となっている。