高齢運転者による交通事故は過剰に報道されている? 日本疫学会誌に論文が
【役に立つオモシロ医学論文】 テレビの報道番組や新聞などのマスメディアにおいて、高齢運転者による交通事故が報道される機会は多い印象があります。一方、高齢運転者の事故リスクは、若年運転者の事故リスクを上回ることはなく、被害者に大きな損害を負わせるリスクも低いことが報告されています。その意味では、高齢運転者による交通事故は、過剰に報道されている可能性もあります。 「マスク論争」に終止符? 新たなエビデンスが英国医師会誌で報告される そのような中、高齢運転者の交通事故と、事故に関する新聞報道を調査した研究論文が、日本疫学会誌の電子版に、2024年10月26日付で掲載されました。 この研究では、16年1月~20年12月の間に、読売新聞と朝日新聞に掲載された自動車による死亡事故の記事が調査対象となりました。警察庁や交通事故総合分析センターのデータを用いて、「警察が報告した事故」に対する「新聞報道された事故」の比、つまり実際の事故件数に対する報道された事故件数の割合を年齢別に比較することで、新聞による過剰報道の可能性を検討しています。 調査の結果、警察が報告した1万2987件の死亡事故のうち、読売新聞と朝日新聞は、それぞれ5888件、2909件の死亡事故を報道していました。 読売新聞が報道した死亡事故の割合は、運転者の年齢が30歳未満で39%、30~69歳で35%、70歳以上で31%でした。朝日新聞が報道した死亡事故の割合も同様に、各年齢でそれぞれ20%、16%、14%でした。また、死亡者が多い事故や子どもが死亡した事故は、運転者の年齢に関係なく報道される傾向にありました。 論文著者らは「高齢運転者による死亡事故は、新聞報道において過剰に取り上げられていることはなかった」と結論しています。 (青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)