休業補償を受けられない――飲食店アルバイトの苦悩、制度の盲点と求められる支援金
新型コロナウイルスの感染拡大から1年あまり。飲食店の営業自粛や時短営業で、収入が減ってしまったという非正規労働者は多い。中には休業補償を受けられなかったという人も。なぜ、頼みの綱である補償を受けられなかったのか。彼らを救済する仕組みはないのか。当事者から話を聞き、背景に迫った。(ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
時短要請で月収が大幅ダウン
千葉県内の主要駅近くにある立ち食いそば屋。首都圏で展開するチェーン店で、昼のピーク時には四十数席がすべて埋まる。アルバイトの浅見華子さん(50代、仮名)は、手慣れた様子で天ぷらを揚げ、次々と客に応対していく。 接客業は自分に合っていると言う一方、つらい思いも抱えている。 「常連さんの好みを覚え、割り箸を所望したお客さんの顔を覚え、と努力をしてきたつもりです。6年も働いてきたのは、会社に信頼があったから。ただ、コロナのような非常時になって、アルバイトと正社員でこうも扱いが違うのかと知りました……」
浅見さんはもう一つ別のそば店でもアルバイトしている。コロナ前、1日12時間働いていた。まず首都圏チェーン店で朝9時から15時まで6時間。その後少し休んで、別のそば店で17時から23時まで6時間。月収は前者が約13万円、後者が約15万円だった。 しかし、初の緊急事態宣言発出から1ヶ月経った2020年5月、首都圏チェーン店の店長に声をかけられた。1日2~3時間の勤務時間の短縮(時短)要請だった。 「そんな……」とショックだったものの、最終的には受け入れた。 「聞けば、ほかのアルバイト仲間も要請されていました。その時はコロナが長引くとは思っていなかったので、『不安だねーっ』『いまは切り詰めるしかないよね』と気楽に話していました」 1日3000円前後手取りが減り、月では6万円ほどのマイナスになった。
同じ5月に、もう一店の店長からも時短勤務を告げられた。1日3時間短縮で、勤務は17時から20時までに。こちらも月6万円のマイナスとなった。5月以降、浅見さんの月収は約28万円から約16万円に減った。生活は突然厳しくなった。