「ゲームだけの人間にはなってほしくない」プロゲーマー・高橋名人が子どもたちに伝えたいこと #昭和98年
「ゲームだけの経験値だとつまらない人間になる」ゲームに熱中する子どもたちに伝えたいこと
――高橋名人がゲーム業界に入った80年代は、ゲームに対して世間はどのように見ていたのでしょうか。 高橋名人: 80年代は今よりゲームに対する世間の見方は厳しかったですよ。1978年に「スペースインベーダー」が発表されて、いまのゲームセンターとは違った「インベーダーハウス」が乱立しました。当時はモニターが見やすいように店内の照明が暗くなっていて、その雰囲気も相まってPTAから「子どもたちは入場禁止」という通達がなされて、「不良のたまり場」というイメージになってしまった。ゲームセンターに行ったら近未来的な遊びがあるのに、子どもたちは遊べない時代があったんですね。 そこにファミコンが出てきて、ゲームセンターのゲームを家でできるようになった。これは当然夢中になるに決まっています。ゲーム機が家にあったら、「ご飯だよ」と親に言われてもやり続けるわけですよね。だから親がACアダプターを隠したりとかして。だけど、どんなことでも熱中している子どもは、なかなかそれをやめない。本を読むのが好きな子どもに「ご飯だから本を読むのをやめなさい」と言っても熱中してやめないこともありますよね。 ――そういった状況に対して、高橋名人はどのように思っていたのでしょうか。 高橋名人: ゲームは1時間ぐらいにして、他のことにも取り組んでほしいという気持ちは当時から変わらないですね。体力もつけてほしいし、運動神経を鍛えるためにサッカーとか野球もしてほしい。成長期にゲームをするだけというのは良くないと思うんです。「1時間じゃゲームをクリアできない」という子どももいますが、ゲームはクリアするためにやるのではなく、楽しめればいいということを伝えたいですね。 ――高橋名人はゲームが持つ良さってどんなところにあると思いますか。 高橋名人: 私は、ゲームってコミュニケーションツールの一つだと思うんですよ。ゲームは、おじいちゃんおばあちゃんが孫と会話するためのツールにもなり得るんですよね。以前、80歳を超えたおばあちゃんが、元ハドソンのゲームを毎日1回クリアしているというニュースがありました。そのおばあちゃんが遊んでいる様子を孫が見に来るんですよ。孫がそのゲームを始めて、おばあちゃんが「そこは、こうするんだよ」とティーチングをしていて、私はほのぼのと嬉しい気持ちになりました。 最近はゲームがきっかけで仲良くなって結婚した人もいますよね。実際私が以前所属していたハドソンにもゲーム配信つながりで結婚した人たちがいましたし。そういう形でゲームが現代の中でうまく活用されていくといいなと思いますね。