大竹まこと「老人ホームは自分にとってつらい」老後を諦めない生き方とは? #老いる社会
1963年に老人福祉法が制定されて60年目を迎えた今年、日本の総人口に占める高齢者の割合は29.1%と過去最高を更新した。コントユニット「シティボーイズ」のメンバーで、テレビやラジオで長年活躍する大竹まことさんも団塊の世代と呼ばれる高齢者の一人。大竹さんは74歳になり、さまざまな場面で老いを感じることが増え「死が近いことがわかってきた」と語る一方で、「終活なんてものは一切考えていない」と話す。「老人ホームに入るということは様々な権利を諦めることになる」という大竹さんが考える“老後の生き方”とはーー。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
映画を見る老人に“前向きな狂気”を見た
――現在74歳ですが、ご自身の老いを感じることはありますか。 大竹まこと: 何にもないところでつまずいたり、壁にガンガンぶつかったりするようになったね。自宅では2階で寝てるんだけど、寝る前に物を忘れたから1階まで取りに行くっていうのを4回ぐらい繰り返したら、もう嫌になった。取りに行くのをやめようと思ったくらい。食べ物を消化するのだって、うまくできないからね。そういう衰えが体全部に来てるわけ。いろいろ諦めるようになってきた。そういうところで死が近いことがわかってきたよね。 ただ、死に際にベッドの周りに孫が来て、家族に囲まれて……みたいなのは、俺にとってはどうなんだろうって思う。死ぬときは1人だし、パっと死ぬのでいいんじゃない? 今後、もっと体力が衰えていったときに、自分が人生の主人公じゃなくなって、人にあれこれ振り回されるのが嫌だっていう感覚があるのかもしれないね。 ――周りの同世代の皆さんを見て、思うことはありますか。 大竹まこと: 最近、宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」を見たんですよ。映画館で同じ席の並びに、俺と同い年ぐらいの車いすの老人の方がいらした。ちょっと気になって見たら、真剣に、一生懸命に見てるの。でも、俺もその老人も、もう「君たちはどう生きるか」っていう歳じゃないわけじゃん。「どう生きるかって言われてもなあ……」って思ってもいいのに、その方は食い入るように映画を見ていた。それから映画館を出て、カレー店さんに入ったんだけど、そこで隣になった老人が、おでこにカレーがつくんじゃないかってくらい前のめりで真剣に食ってるわけよ。俺、それがすごいなと思ったんだよね。 映画館で出会った車いすの方も、カレーライスの方も、年寄りなんだけど前を向いてるじゃん。「君たちはどう生きるか」を真剣に見てること自体が前向いてるって話でしょ。俺も同じぐらいの歳だけど、ただ前を向いているだけじゃなくて、「そこまで前を向くか!」っていう狂気みたいなものを感じたんだよ。それは生きる力でもあって、自分の人生を諦めていない。それって、子どもが野原で理由もなく走り回ったりするのに似たものだと思うんだよ。前を向いて生きることって狂気みたいなものなんだって気付かされたね。