小田凱人「車椅子テニスをもっと格好良く表現したい」OCEANS AWARD受賞者インタビュー
悪いときこそ感情を見せないよう意識
高い集中力と精神力が求められるテニスはメンタルのスポーツと言われる。緊張が競技に影響を与えることはないのだろうかと聞くと、小田さんは「試合は緊張しないんですよ」と笑う。それはパリパラリンピックの決勝の舞台でも同じだった。
「ただ、いつもの試合とはまったく違う感情でした。やっとかぁって、昔を振り返ったり、決勝戦で戦っている姿をイメージしていたら、どんどんテンションが上がってきて、試合前に泣いちゃって。で、パッとコーチ見たら、コーチも泣いてて(笑)。『え!? 泣いてる!』って、ちょっと笑いそうになりましたね」。 パリの決勝では、観客を煽るパフォーマンスを見せるなど、試合を楽しんでいる姿が印象的だった小田さん。だが、そんな自然体の彼も、試合で追い込まれたときだけは別だと語る。 「僕、対戦相手のプレー以外の仕草とか、めっちゃ見るんですよ。で、相手が怒っていたら『これはいける』と思う。だから実際はわからないけど、相手からも常に見られているって意識していて。良いときはガッツポーズをしたりするけど、悪いときは自分に逆らって、なるべく感情を出さないようにしています。そこが自分の力の見せどころだし、感情に左右されたら自分に負けたって感じですね」。
車椅子は僕にとっては乗り物のひとつ
そんな小田さんの理想の男性像は「やり過ぎない人」。 「僕はインタビューでも結構色々と話しちゃうんだけど、本当はもうちょっと抑えたほうがいいかなと思うこともあるんです。でも、今はどんどん発言していかないと、注目してもらえないから」。
次々と話題が移ろっていくスポーツ界において、実績の価値をいかに最大化できるかを考える選手や関係者は多い。そして、若くして小田さんもその任を感じている。 「最近、自分がこうなりたいというよりも、車椅子テニスをこうしたいという考えが強くなってきたんです。僕の中では車椅子は、自転車やスケボーと同じ“乗り物”だと思っている。だから、ぶっちゃけ足が悪くなくても、乗ってもいいと思っているし、もっと多くの人に車椅子テニスをプレーしたいと思ってほしい。