小田凱人「車椅子テニスをもっと格好良く表現したい」OCEANS AWARD受賞者インタビュー
腕を大きく広げると、車椅子をクルクルっと回し、全身で喜びを表すように、コートに倒れ込んで、空を仰いだ。 2024年9月8日、パリパラリンピックの男子車椅子テニスで金メダルを獲得した瞬間の彼の姿が目に焼き付いている人も多いだろう。 9歳で左脚に骨肉腫を発症。国枝慎吾さんに憧れて車椅子テニスを始めた少年は、わずか8年(車いすテニスを始めたのは10歳)で世界最高峰の舞台に辿り着いた。
自分を好きでいることがウェルビーイング
ファッションも好き、音楽も好き、運転免許だって取りたい。コートの外でもやりたいことが山ほどある。それもそのはず。小田凱人さんはまだ18歳だ。 「僕はアスリートなんだけど、食事でも、遊びでも、好きなことはするタイプ。選手として競技を優先するのはもちろんだけど、心をネガティブにせず、心身ともに健康でいるためには、好きなことをして、自分を好きでいることが何よりも大切だと思っていて。それが僕にとってのウェルビーイングですね」。
時折いたずらっ子のような笑顔を見せながらも、こちらの質問に熟考し、しっかりとした口調で自分の思いを語る姿は18歳とは思えない成熟ぶりだ。小田さんはその理由を「自分を表現することが好きだから」と話す。なかでも一番自分を表現できるのは、やはり車椅子テニスだ。 「今日みたいな撮影ももちろん好きだし、自分らしい服も好きだけど、結局僕は勝負が好き。あくまでもスポーツ選手で、プラスアルファで違う姿を持つというのが、すごく自分に合っているし、理想的だなと思っています。 でも、それをするためには、勝負に勝たないといけないですよね。好きなことができるから、また勝とうと思うし、勝てば好きなことができるし。その相乗効果は今、どんどん高まっています」。
自分を表現したい。その熱意は今回の撮影でも見てとれた。メイクルームでヘアメイクと相談をしながら共同作業でヘアセットし、カメラの前に立てば、モデルのように次々とポージングや表情を変えていく。同席したマネージャーは「彼が緊張しているところを見たことがないんです」と話す。 「こういう撮影なんかは緊張していますよ。でも『うわ、緊張してる』っていうだけで、そのまま受け入れています。よくメンタルコントロールって言うけど、覆そうとするとあまり良くないんじゃないかなと思っていて。緊張しないようにするのではなく、思ったままいることが僕にとっては大切ですね」。