特攻隊長との別れ「それ来たぞ」「いよいよ来たか」淡々と死刑執行へ~28歳の青年はなぜ戦争犯罪人となったのか【連載:あるBC級戦犯の遺書】#60
俺は死なないんだぞ
<十三号鉄扉(散りゆきし戦犯)> 彼がその翌日、執行を前にして最后の独房の中で書いた文の中には、「雨に霞む東京の街々を窓から眺めている。今夜死ぬのだというような意識は全く感じられない」という事もあった。 「マックは一体俺を殺せると思っているのかい。何を殺すんだ。俺は死なないんだぞ」といつも言っていたが、永遠の生命を確信している彼の深い信仰は、最期に於いても少しも動揺しなかった。 〈写真:スガモプリズン〉 佐藤大佐の追悼文はこれで終わる。淡々と部屋を後にしていった幕田大尉。その心の内はどうだったのかー。 (エピソード61に続く) *本エピソードは第60話です。
連載:【あるBC級戦犯の遺書】28歳の青年・藤中松雄はなぜ戦争犯罪人となったのか
1950年4月7日に執行されたスガモプリズン最後の死刑。福岡県出身の藤中松雄はBC級戦犯として28歳で命を奪われた。なぜ松雄は戦犯となったのか。松雄が関わった米兵の捕虜殺害事件、「石垣島事件」や横浜裁判の経過、スガモプリズンの日々を、日本とアメリカに残る公文書や松雄自身が記した遺書、手紙などの資料から読み解いていく。 筆者:大村由紀子 RKB毎日放送 ディレクター 1989年入社 司法、戦争等をテーマにしたドキュメンタリーを制作。2021年「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」(テレビ・ラジオ)で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞審査委員特別賞、放送文化基金賞優秀賞、独・ワールドメディアフェスティバル銀賞などを受賞。