選挙人の過半数に届かなければ200年ぶりの「臨時選挙」発動で、驚愕の「ねじれ政権」誕生!?【前嶋和弘の2024アメリカ大統領選、深層ウォッチ】
■臨時選挙で、下院が大統領、上院が副大統領を選出!? ただし、この臨時選挙で下院が大統領を決定する場合、問題になるのが、各州にはそれぞれ1票しか与えられないという点です。つまり、人口わずか58万人のワイオミング州も1票なら、人口3900万人で下院議員が52人もいるカリフォルニア州も1票ということになる。当選には50州の過半数、26票が必要ですが、各州の下院議員が「その州に与えられた1票」の行方をどのように決めるのかは、それぞれの州に委ねられています。 選挙前の下院は共和党が220議席、民主党212議席と、議席数では共和党がわずかに上回っていますが、11月5日の選挙後の新たな議席配分で、それも議員それぞれに1票ではなく「州1票」となると、その行方は非常に読みにくくなってきます。 おそらく「各州の下院のうち、議席数の多い方の政党に1票」「下院1議席の州はその議員の政党に1票」という形をとるのが最も現実的な方法だと思いますが、このやり方を現在の下院の議席数に当てはめてみると、民主党22票、共和党26票、ノースカロライナとミネソタの2州は下院議員が民主党、共和党で同数なのでどちらに投票すればいいのかわからない......となるので、ここでもやはり大接戦となりますが、このままなら共和党のトランプが26票を獲得して大統領になる計算です。 もちろん、実際には11月5日の議会選挙後の下院の構成次第で臨時選挙の結果も変わってくるので、トランプ陣営はこうした状況も想定しているのか、激戦州以外の州の下院議員候補の応援にもかなり力を入れているといわれています。 一方、上院による臨時選挙での副大統領選出方法は下院の大統領選出方法よりもシンプルで、上院議員100人にそれぞれひとり一票が与えられることになっていて、こちらも11月の選挙で改選される上院34議席の行方も踏まえた、新しい下院で多数を占める政党が副大統領を選出することになります。 今回の上院選挙は、改選する34議席の内、民主党が23議席で何人かは引退するため、改選後の上院では共和党が多数派を占める可能性が高いといわれています。仮に上院で共和党が多数となれば、副大統領を選出する臨時選挙では共和党のJ・D・ヴァンスが選ばれる可能性が大きいでしょう。 従って、仮に11月5日の選挙でハリス、トランプのいずれの候補も選挙人270人を獲得できず、下院選挙では民主党が、上院選挙では共和党が多数を占める状況で200年ぶりの臨時選挙が行なわれれば、民主党優位の下院がハリスを大統領に選び、共和党優位の上院が副大統領にヴァンスを指名するという、驚愕の「ねじれ政権」が誕生する可能性もあるわけです。もちろん、そのよう政権がまったく機能しないことは誰の目にも明らかですが......。