小田急ロマンスカー「VSEと性格真逆」EXEの将来 通勤に活躍、子供を泣かせた“名車”は次世代特急で置き換えへ
EXEは1999年までに10両編成(6両編成+4両編成)合計7本を導入し、通勤特急としての色彩を強めていたロマンスカーを支える存在となった。夜の帰宅時間帯の列車名「ホームウェイ」が登場したのも1999年だ。 一方、その地味さゆえに「『ロマンスカーじゃない』と駅で子供が泣いた」という不名誉なエピソードが小田急社内に伝わっている。通勤客と観光客、大人と子供で評価が大きく分かれる車両でもある。小田急ロマンスカーのために創設されたような鉄道友の会の「ブルーリボン賞」は、歴代車両のうちEXEだけが受賞していない。
EXEの後、“ロマンスカーの伝統”に回帰するかのように2005年にデビューしたのがVSEだった。窓の下にロマンスカーの伝統色「バーミリオン・オレンジ」がベースの細い帯を入れた「シルキーホワイト」の車体で、先端から後方へ流れるようなデザインが目を引いた。 VSEの愛称は「Vault Super Express」の略。Vault(ヴォールト)は客室の約2.5mある「ドーム型の天井」を意味する。幅4mの側面窓に沿って、真正面より少し外側を向いたシートを配置した。先頭車の運転室を客室の天井裏に上げ、大きな曲面ガラスで前面の眺めを楽しめるようにした展望席や、車両と車両の間に台車を配置した連接構造を復活させた。
10両編成で、定員は358人。車内は通常の客席のほか、4人がけのセミコンパートメント「サルーン」席やカフェカウンターも設置した。観光特急としてのロマンスカーのフラッグシップとなった。 ■観光と通勤のバランスは? 2017年以降、EXEは10両編成(6両編成+4両編成)2本を残して、EXEαにリニューアルした。分割・併合を可能にしてフレキシブルな運用ができるようにしたEXEの特徴はMSEにも引き継がれている。MSEは「Multi Super Express」の略。地下鉄乗り入れでロマンスカーの活躍の場を広げ、マルチの名のとおりJR御殿場線直通や朝夕の通勤特急まで幅広い運用についている。