【サブスクで観るならこの1本!】役所広司×小栗旬!無骨な木こりと気弱な映画監督の出会いがもたらす小さな奇跡
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2012年公開の『キツツキと雨』をご紹介します! ◇ 『キツツキと雨』(2012年・日本) (配信:U-NEXT / Hulu ) 映画制作の裏側を通して描かれる人間模様に注目! 『南極料理人』『横道世之介』『さかなのこ』などで知られる沖田修一監督作。のどかな山村で木こりとして働く克彦(役所広司)は、東京からゾンビ映画の撮影でやってきた撮影隊と遭遇し、成り行きで撮影に協力することに。25歳の気弱な映画監督・幸一(小栗旬)は、スタッフをまとめられず思い通りの撮影ができずにいたが、克彦との交流を通して徐々に変化していき、村の人々をも巻き込んでの撮影は佳境に突入していくのだが……。 日頃目にする映画は、時間にしてみれば90分から120分ほどで終わるものがほとんどだと思うが、その何十倍もの時間や労力をかけて映画は作られている。そう理屈では分かっていても、具体的にどんなことが行われているのかまでは分からない。そんな映画制作の裏側を覗き見る楽しさや、そこで繰り広げられる人間模様の面白さが詰まっている本作。映画の世界とは無縁で素朴な人柄の克彦との交流を通し、自分らしさを取り戻していく幸一。息子と同じ年齢の幸一との交流を通し、映画の世界に魅せられるのと同時に、無職の息子との関係性を見つめ直していく克彦。 具体的に何かを相談し合ったり思いの丈を吐露し合うという場面はないのだが、共にひとつの物を創り上げていく過程でそれらの人間模様を描いているところが小気味よく、そういった2人の変化が周囲の人々にも影響を及ぼしていく様が見ていて非常に心地よい。人間くさくて、どこかおかしくて、やさしい気持ちになれる。そんなあたたかさこそが沖田監督作品の魅力であり、元気を取り戻したいときなどに是非ご覧いただきたい1本です。また、本作がハマったという方は、他の沖田作品も併せてご覧になってみてください♪ (C)2011「キツツキと雨」製作委員会 ※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。 ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。
ミヤザキタケル