角田裕毅の才能を僚友リカルドが語る「F1で勝てるかどうかは、その時になってみないと分からない。しかしユウキには能力がある」
8度のグランプリウィナーであるダニエル・リカルドは、RBでコンビを組む角田裕毅について、グランプリで勝つための能力があると高く評価しつつも、本当に勝利をもぎ取れるかどうかは、ドライバーが「そのポジションに立たされるまで分からないものだ」と語った。 【ギャラリー】角田裕毅 × VERDY コラボポップアップ F1 at 渋谷パルコ 現在35歳のリカルドは、これまでの14シーズンの中でレッドブル・レーシングやマクラーレンでグランプリ勝利を経験。RBからフル参戦復帰となった今年は、ベテランとしてのノウハウをチームに注入してきた。 一方で24歳の角田は今年でF1参戦4年目。RBやその前身のアルファタウリ、トロロッソといったレッドブルのジュニアチームへの所属年数は、歴代のドライバーの中でも最も長い部類だが、今後が期待される若手ドライバーだ。 リカルドは11歳下の角田について、現在の成長を認めた上で、参戦2年目となる2022年にはその片鱗が見えていたと評価。ただ、ルーキーイヤーの2021年に犯したミスや暴言の数々が尾を引いているのではないかと語った。 角田が過小評価されていると思うか? と訊かれたリカルドは次のように答えた。 「今は間違いなく、正当な評価を受けていると思う」 「おそらく多くの人は、彼が多くのミスを犯した1年目のことがまだ頭の中にある。そしてF1への適応が上手くいかなかったように感じられたんだろう。『もしかすると彼はF1に適応できないんじゃないか』ってね。そしてそれは全て少し行き過ぎていた」 「2022年は、ある時点までガスリー(ピエール・ガスリー/当時の角田のチームメイトで現在はアルピーヌ所属)がコンスタントに勝っていたが、既にその年の後半にはガスリーを上回るような活躍を見せ始めた。だから僕は既に『この子は上手くいき始めている』と認識していたよ」 「レッドブルのことを考えてみても、彼らと契約を結べば、そのドライバーにペースがあること、1周の速さがあることの証明になる。通常、彼らはレースの組み立て方という点を完成させようとする。でも速さという面で、彼らはスピードの無いドライバーと契約することはない」 「だからユウキが1周のペースを持っていることは僕も分かっていたし、ただ彼が快適に走れるようにしていただけだと思う」 「間違いなく、彼はここ2~3年で大きく成長した。彼は速いよ。彼を評価するかって? それはもちろんだ」 「彼はおそらく、自身の態度やクレイジーな無線のやり取りなどにも、もう少し気をつけている。まだ出てしまうこともあるけど、彼はそれをもう少し抑えるようになったと思うし、それが彼の助けにもなっていると思う。そう、彼は良いドライバーだ」 「僕の経験がチームにもたらされたことが、マシンセットアップや開発でも彼の助けになったと思う。僕らがしてきた開発については、おそらく僕の手柄にもなるかもしれない。でも、彼は本当に良い仕事をしていると思うよ」 「ここは彼が知っている唯一のF1チームだ。だから、彼にとって次はどうなるんだろうね? そして異なる環境に適応し、どうやっていくんだろうか?」 リカルドが示唆したのは、角田がシニアチームであるレッドブル・レーシングなどのトップチームでも輝けるかどうかという点だ。現在そのレッドブル・レーシングに所属するセルジオ・ペレスが不振に陥ったことで、姉妹チームであるRB所属の角田やリカルドも後任ドライバー候補に挙げられた。 サマーブレイク後もレッドブル・レーシングは、マックス・フェルスタッペンとペレスのコンビを継続するようだが、角田はあくまでもシニアチームへの昇格を第一の目標に据えている。 仮に角田が現在のレッドブル・レーシング昇格となった場合、チャンピオンをも争うトップチームでのレースはグランプリ勝利というプレッシャーに当然晒される。 リカルドは角田がそのプレッシャーを跳ね除けて勝利を手にすることができるかどうかは「その時になってみないと分からない」と考えているが、角田の能力に疑いはないと太鼓判を押した。 「彼はここ数年で大きく成長したと思う。本当にいいペースとスキルを見せていると思うかと訊かれれば、そうだと思う。安定感も出てきたよね」 「でも、これは難しいことで、ユウキに限った話じゃない。グランプリで勝ったことがないドライバーなら誰もそうだろう。次に何が起こるかなんて分からないものだ」 「モンツァ(2021年イタリアGP)でのランド(ノリス)を振り返ってみても、僕が勝って彼は2位だった。次のレースでは彼がポールからリードした。でもあの時はルイスが持ち前の経験と冷静さで勝利を掴み、ランドはレースで敗れた」 「3年前のことだし、当時のランドには少し荷が重すぎたのかもしれない。見ての通り、今の彼は勝てることを証明してみせた」 「僕が言いたいのは、本当にできるかどうかは、そのポジションに立たされるまで分からないということだ」 「僕らは皆、いわばスピードを持っている。しかしスポットライトに照らされた時でも正しい決断を下し、最も冷静でいられるのは誰か? ということだ。ユウキはそのうち、それにアンサーを返す必要があるけど、僕の答えは『絶対にノーではない』ということだ」 「僕は彼にその能力があると思う。でもそこは彼次第だ」
滑川 寛 ,Filip Cleeren