被害者は「泣き寝入り…」治療費は“自己負担”自転車ひき逃げ事故でけがしても保障はなし?#みんなのギモン
■自転車のひき逃げ事故 被害者の補償は?
交通事故の加害者は、救護や通報の義務のほか、被害者に対する損害賠償責任を負っています。 すべての自動車(原付自転車、電動キックボードを含む)は、事故を起こした際に、被害者に損害賠償として保険金が支払われる自賠責保険の加入が義務づけられています。 また、ひき逃げといった加害者が不明の場合や、無保険の車が事故を起こした場合にも、国が自賠責保険と同等の損害を補填し被害者を救済する「政府保障事業」という制度を設けています。2019年~2023年の5年間で起きたひき逃げ事故で、1560人に対してこの政府保障事業を使い保障金が支払われています。 一方、自転車は道交法で「軽車両」とされていますが、自賠責保険、政府保障事業のいずれも対象になっていないのです。多くの自治体では、自転車損害賠償責任保険などへの加入を義務化する条例を設けていますが、ひき逃げ事故の被害者を救済する制度はありません。 本来、第三者行為によりけがをしたときの治療費は、加害者が全額負担するのが原則ですが、ひき逃げ事故では被害者が自己負担しなくてはならないのが実情です。
■”自転車ひき逃げ”被害者救う保障制度は
ひき逃げ被害に遭った人を救済するためにはどうすればいいのでしょうか。 交通民事賠償問題に詳しい遠山信一郎弁護士(山下・遠山法律事務所)は、自転車にも政府保障事業のようなシステムができることが望ましいと話します。 遠山弁護士 「自転車のひき逃げ被害者を、政府保障事業と同等に救済するためには、法律(自賠法)を改正するか、もしくは、税金で補償するなど別立てで制度を考えていくかということになると思います」 しかし、自賠法の改正には難しい課題があるといいます。 遠山弁護士 「法改正をして政府保障事業のような制度を作ろうとすると、自転車の所有者から保障料を徴収することになります。国民の同意が得られるかというと非常に難しい」 そういった面からも、自治体が政府保障事業と同じような救済制度を条例で作り、原資を税金でまかなうという方法が現実的だといいます。 遠山弁護士 「全国レベルでやるなら法制度が必要になりますが、自転車事故は自動車事故に比べると発生件数が少ないということからすると、自治体レベルで条例を作って制度設計するというほうが現実的かもしれません。」 「制度作りには、事務手続きの担い手と制度運用資金が必要ですが、事務手続きを自治体が担い、原資を自転車メーカー団体や国が出すなどの調整ができれば実現可能かもしれません」 被害者の”泣き寝入り”がなくなる制度作りが求められています。
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