テスラ率いるイーロン・マスク氏はなぜEVメーカーに逆風となるトランプ氏の「補助金打ち切り」方針を支持するのか
■ 補助金廃止を百も承知で政府効率化省のトップに就いた意図 テスラといえばリーマンショック後の2010年にトヨタ自動車の出資を仰ぎ、トヨタとゼネラルモーターズの合弁製造拠点NUMMIを譲り受けたことで知られる。 同年11月に来日して当時トヨタ社長だった豊田章男氏と共に共同会見を行った際、マスク氏は株を3%持たれただけなのに連結子会社になったかのようにトヨタを褒めたたえ、章男氏を「希代のクルマ好き」として持ち上げた。もちろん章男氏も悪い気がするはずもなく、終始満面の笑みを浮かべていた。 オバマ大統領をも篭絡した圧倒的コミュ力をライブで目の当たりにした記者たちは衝撃を覚え、長く語り草になったほどである。 そんなマスク氏の性格からして、トランプ氏にも大喜びしそうなことを散々吹き込んだであろうことは想像に難くない。トランプ氏は公約のひとつに「連邦政府の効率化」を掲げているが、これはマスク氏の進言によるものと言われる。 選挙に勝利したトランプ氏はさっそくそれを実現させるための新組織、DOGE(Department of Government Efficiency=政府効率化省)の設立を宣言し、そのトップにマスク氏を起用する考えを示した。 さて、ここでマスク氏の意図である。先に述べたように民主党と思想的に真逆で欧州型の環境政策を嫌うというトランプ氏の政治姿勢は全く変わっていない。パリ協定からの再離脱も現実味を帯びている。つまりマスク氏が1期目に助言機関の委員を辞任した時と状況が同じであるばかりか、民主党がこれまでBEV推進のために出してきた潤沢な補助金も大幅縮小ないしは廃止される可能性が高まっている。こうなるのは最初から火を見るより明らかで、マスク氏もそのことは百も承知でトランプ氏を推したのだ。 となると、マスク氏の目的はわりとシンプルで分かりやすい。政府効率化省のトップとしてアメリカの社会システムを変革し、それによって自分のビジネスを盤石なものにすることだ。