今振り返る、優勝につながった「2017年のラブレターズ」
「溜口スーパーショー」から還元されたもの
──2017~2022年のいわゆる「不遇の時期」には、各々の活動もめざましかったように思います。かつて劇団に所属していた溜口さんではなく、塚本さんは2020年から2023年にかけて立て続けに東葛スポーツやシベリア少女鉄道の演劇作品に出演されています。演劇での経験はラブレターズに影響ありましたか? 塚本:何がどう作用しているかはわかりませんが、自分の演技を外から観て指摘してもらう機会はこれまで多くなかったので、「こう居ればいいんだ」とわかった部分が多少はあったかもしれません。あと、東葛スポーツが岸田國士戯曲賞を獲ったのは大きかったですね。ラップをベースにする演劇という形は変えず、でも作風を明らかにシフトチェンジして受賞したのはかっこいいと思ったし、僕も本当に頑張りたいという気持ちになりました。 ──塚本さんはGAG福井(俊太郎)さんのユニットライブに出演ではなく「演出」という立場で参加されたこともありましたね。 塚本:そうですね。それもありますし、あと東京03さんのラジオコント番組(NHK第1『東京03の好きにさせるかッ!』)にコントを書かせてもらうようになったのも、すごく勉強になっている感覚がありますね。引いて観る/観てもらうという経験が、自分たちのコントを肉付きよくしたのかもしれないです。 ──いっぽう、溜口さんは2017年に「溜口スーパーディナーショー」という、今に続くイベントをスタートさせています。 溜口:僕は本当にこんな、7年も続くつもりでやってないですもん。「歌を歌ってみたいな」というただの興味本位で最初の公演をやってみたら、なんかお客さんが入ってくれて、もう一度やってみたらチケットがやけに売れて。毎回最後のつもりでやっているんですけど、お客さんが来ちゃうから(笑)。 塚本:待ってるお客さんがいるからね。 溜口:僕としては本当に辞めたいんですよ。やるのが嫌なんじゃなくて、脚本を書かなきゃいけないのがつらくて。 ──ラブレターズでは基本的に塚本さんがネタを書く側ですが、「溜口スーパーショー」シリーズでは溜口さんが作・演出ですし、最初の頃は歌、コント、大喜利などのひとつであった大衆演劇が、劇場が大きくなるにつれて長尺になっていますもんね。パルコでの公演も控えていますが(11月に池袋パルコ55周年を記念したイベント内で、『溜口スーパーPARCOショー』として45分尺の公演を敢行)。 溜口:パルコの準備もめっちゃしんどくて! もちろん、やってみたら楽しいんですけどね。塚本さんとのネタ合わせのとき、僕が無茶苦茶な設定を出して、「さすがに無理だよ」と言われたようなことを詰め込んだのが「溜口スーパーショー」なんです。コンビでやったらラブレターズの名にキズがつくし、スベったら塚本さんにも影響が出ちゃう。そういうものをガス抜きのつもりでやってみたらうまいことハマったという。 ──脚本を書くのはたいへんそうですが、これもラブレターズに何か作用するものがあるのでは? 溜口:ネタを書いている人の気持ちもわかるようになったし、演出を経験して視野が広がったのはマジで大きいかもしれないですね。コンビでは「面白さ」を追求しますけど、スーパーショーは「お客さんに喜んでもらえるものを提供したら、どれくらい返ってくるんだろう」という実験で。それがラブレターズに多少は還元できていると思います。