キオクシアの北上新棟が動き出す…NAND市況回復、9月に装置搬入
キオクシアが操業開始を見送っていた北上工場(岩手県北上市)の新棟「第2製造棟」が動き出す。NAND型フラッシュメモリー市況の悪化を受け、開始時期を2023年から延期し、建屋への半導体製造装置の搬入を中断していたが、9月から装置の搬入を始めることが分かった。市況の回復を踏まえて早ければ25年にも操業しNANDを増産。データセンター(DC)需要を取り込む戦略を推進し、24年中の新規株式公開(IPO)を目指す。 【写真】キオクシアの北上工場 NAND価格は22年後半から下落し始め、NANDメーカー各社は減産に踏み切った。キオクシアも22年10月から四日市工場(三重県四日市市)と北上工場で減産を実施してきた。その影響で北上工場第2製造棟の操業開始を23年中から25年以降に延期していた。 ただ23年後半から価格が上昇に転じており、台湾の調査会社トレンドフォースによると24年4―6月の価格は前四半期比で13―18%上昇すると予想している。市況の回復が続く情勢を踏まえ、足元ではキオクシアは減産を解除している。 複数の関係者によると、第2製造棟については9月からの装置搬入に向けて準備しているという。キオクシアは月内にも操業開始時期を正式に決定する方針。第2製造棟の操業を開始して生産能力を拡充し、生成人工知能(AI)向けDCで使われるソリッド・ステート・ドライブ(SSD)などの需要を取り込む。 親会社のキオクシアホールディングス(HD)は6月、銀行団と融資の借り換えや、2100億円の追加融資枠の設定で合意。懸念だった資金繰りにめどを付けた。設備投資などに資金を配分して収益力を高めつつ、IPOを実現して成長投資を加速し、企業価値を高めて他のメモリーメーカーとの合従連衡を模索する。