小屋に身を潜めて捕獲したウミウ2000羽超、全国の鵜飼いに…キャリア20年の男性引退
茨城県日立市十王町の伊師浜海岸で、20年間にわたってウミウの捕獲を続けた大高敦弘さん(73)が引退した。同僚とともに捕獲したウミウの数は2000羽を超える。市は13日、大高さんに感謝状を贈った。
伊師浜海岸の岸壁はウミウの休憩地で、国内唯一のウミウ捕獲場となっている。岐阜県の長良川など全国11か所で行われている伝統漁法「鵜飼(うか)い」に必要なウミウを捕獲し、供給している。
岸壁にはウミウを捕獲するための「鳥屋(とや)」と呼ばれる小屋があり、春と秋には捕獲者が身を潜める。外におとりのウミウをつなぎ、羽を休めに来た野生のウミウの足をかぎ棒で引っかけて鳥屋の内側に引き込む。
十王町出身の大高さんは2004年、農業をしながらウミウ捕獲を始めた。毎年計約40羽の依頼があるが、条件の良い鳥が求められるため捕獲数は3倍の120羽に上る。10日間待ち続けてウミウが来ないこともあり、「忍耐が必要だった」と振り返る。東日本大震災では鳥屋に下りる階段が土砂崩れで壊れる被害を受け、修復して捕獲を続けた。
今年3月で引退した。大高さんは「各地から『良い鳥をありがとう』と言われることがやりがいだった」と語る。現在はキャリア8年の柴田勝典さん(54)と、初の公募で昨年採用された篠木拓さん(53)の2人がウミウ捕獲の技術を受け継いでいる。
「多年にわたり捕獲技術及び鵜飼い文化の伝承に多大な貢献をした」として感謝状を贈った小川春樹市長は、「大変な苦労があったと思う。これからも後方支援の形で伝統文化をつないでください」とねぎらった。ウミウ捕獲者を採用する市観光物産協会は「3人態勢が理想」として来年度も公募を検討している。