前夜に馬場と猪木の密会があった? BI砲が復活した『プロレス 夢のオールスター戦』の舞台裏
馬場が櫻井氏に告げた言葉とは?
――大会当日のメインイベントは、馬場&猪木vsブッチャー&シンというドリームカードでした。オールスター戦が今でも語り継がれている最大の理由は、関係が断絶していたBI砲を再結成させたことに尽きますよね。 他のカードもそうなんですけど、東スポ側が提案したブッチャーvsシンのシングルも馬場がダメだと。要するに、馬場としては新日本が一気に潰しに掛かるんじゃないかという疑念があったんです。 これはもう時効だから言いますけど、銀座東急ホテルの1階の喫茶室で馬場と2人で会っていた時にね、「櫻井さん、わかるだろ? 俺は木村政彦にはなりたくないよ」と言ったよね。つまり、あの力道山vs木村政彦のことを言っているんですよ。「どんなマッチメークであろうとも俺は猪木を信用できない」ということを暗に僕に言ったわけです。 東スポの紙面で「過去のいきさつ」とか「クリアすべき問題」という言葉が話題になったけれども、それは馬場一流の言い方でね。猪木に対して、具体的な要求はなかったんですよ。猪木と同格扱いとか、そういうこともあまり関係ない。ハッキリ言えば、猪木が潰しに掛かってくるんじゃないかというのが馬場の本音で、それはもう根深いものだったね。 だから、メインはBI対決から馬場&猪木のタッグということになったんだけども、これは東スポが出した妥協案で、もうこれしか話がまとまらないだろうと。 ――当時、東スポの紙面ではBI砲の対戦相手を募集するファン投票をしていましたよね? これも今だから話せるけど、あくまでもBI砲の相手はファン投票という形を取るということでね。実際に葉書はたくさん来ました。 ファンクス(ドリー・ファンク・ジュニア&テリー・ファンク)、鶴田&藤波、アンドレ・ザ・ジャイアント&アブドーラ・ザ・ブッチャーとか、いろいろなチームの名前が挙がったよね。でも、当時の感覚でいったらBI砲と鶴田&藤波がぶつかるというのもできないカードなわけですよ。 ブッチャーとシンは両団体のヒールのトップで、ある意味では誰でも知っている大スターでしたし、BI砲と戦わせるなら、この2人が最高じゃないかというのが僕の結論でね。これは絶対に日本武道館が超満員になると。実際に試合も面白かったし、今になって考えてみても、やっぱりブッチャー&シンがベストだよね。 ――あの日、メインの試合が終わった後にリング上で猪木さんが「次は馬場さん、俺と一騎打ちをやろう」と呼び掛けましたよね。あれは完全に猪木さんのフライングだったそうですが。 あれだけの大観衆の前で言われれば、馬場も「ノー」とは言えないからOKしたよね。それで東スポは、翌年もオールスター戦をやろうと動いたんです。その時は馬場vs猪木戦で行けるかなということでね。実際に交渉に入ったんだけども、結局それはまとまらなかった。