前夜に馬場と猪木の密会があった? BI砲が復活した『プロレス 夢のオールスター戦』の舞台裏
大会前日に馬場と猪木が謎の密会
――大会前日までメインイベントのマッチメークで揉めたという話を聞いたことがあるんですが、そうなんですか? 大会の前の晩に、九段下のグランドパレスというホテルで馬場と猪木が会ってるんだよね。猪木が呼び出しをかけて。これは僕もその場に立ち会ったわけじゃないから、詳しいことはわからないんだけど。 ――謎の密会ということですね。 猪木は「そんなことないよ」と言っているから、馬場がどこかに漏らしたんだよね。僕が馬場に聞いた話だと、猪木の方から「ノーと言ったら、明日は出ない」というような要求があったみたいでね。 ――この業界では、よくあるパターンですよね。試合が近づけば近づくほど中止にはできないので、逆に選手側の意見が通りやすくなったりしますから。 「俺がノーと言って猪木が出ないということになると、俺が東スポから恨まれるから」と。馬場は僕にそう言いましたよ。 ――これは“たられば”の話ですし、デリケートな質問なんですが、もし馬場vs猪木の一騎打ちが組まれていたら、やはり猪木さんはリング上で裏切ると思いますか? どうだろうなあ……馬場に譲ったかもしれない。ある部分ではね。実を取って、試合内容では圧倒するかもしれないけど。猪木という男は、そういうところがあるから。 ――先ほども話に出ましたが、東スポ側は翌年に第2回大会の開催を計画したものの、思うように話が進まず頓挫しましたよね。 やっぱり、僕としては馬場vs猪木のシングルというカードをやりたかったな。第2回のオールスター戦はいろんなことがあって潰れてしまったんだけど、この時だって雰囲気的に馬場は「冗談じゃない」という感じだったからね。 でも、こうやって振り返ってみると、各試合にいろんなストーリーがあったし、当時は本当にいい人材がいたなと思いますよ。そして、それぞれのレスラーに強烈な個性があった。それに、やっぱりみんなプロだったよね。カードが決まってから、ゴネた選手は一人もいなかったから。評価は見る人によって違うだろうけれども、僕はそれなりにどの試合も良かったと思うし、手を抜いた試合は一試合もなかったよ。 残念ながらシングルは無理だったけど、BI砲を最後に組ませてプロレス界にとっていいメモリーになったんじゃないかな。
櫻井康雄(元東京スポーツ新聞社編集局長) ,Gスピリッツ編集部