「良い医者」はどこにいる?…開業医が明かす、名医にめぐりあう「超カンタンな方法」があった!
薬を山ほど飲んでいる子
最近はこんなこともあった。いや、これはしょっちゅう経験することだ。2歳半の男の子が長引く咳でうちのクリニックに来た。前のクリニックからいろいろ薬を出されたけど、治る気配がないというのだ。体温は37℃の後半。 聴診器で肺の音を聴いてみるが、きれいである。呼吸のしかたも異常はないし、肺に大きな問題を抱えているとは思えない。 「前のクリニックでは何と言われたんですか?」 「ただの風邪ではなくて、アレルギーも関係してるし、感染もあるでしょうって言われました」 「お薬手帳を持って来ましたか?」 「これです」 どれどれ。最新のページを見ると、痰切り2種類・咳止め・気管支拡張剤・抗ヒスタミン剤・喘息のアレルギー止め・セフェム第三世代の抗生剤・整腸剤。すごい量だ。 だが、こういう処方はよく見るので、実は驚かない。
気になる病名は…
「これをもう1週間、飲んでいるんですか?」 「そうなんです。全然変わらないんです」 「最初受診したときに、肺からゼーゼーとかヒューヒューとか、そういう音があるって言われましたか?」 「あ、それはないです」 「お母さん、アレルギーで咳が出るって・・・それって喘息ってことです。喘息は息を吐くときにゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴が聞こえるので、それで診断を付けるんです」 「……」 「ま、お母さんに言ってもしかたないですよね」 「何の病気なんでしょうか?」 「アレルギー止めが効いていないのだから、アレルギーではありません。抗生剤が効いていないのだから細菌感染ではありません」 「じゃあ、病名は?」 「病名は…風邪です」 「は?」
後から診る医者は効かない薬を知っている
風邪の咳はだいたい10日くらい続く。10日を超えると、ハナがのどに回っているのかなとか、咳の原因を考える。小さい子では百日咳を考えるし、年長の子であればマイコプラズマ感染症を考える。 この子の咳はまだ10日経っていない。ぼくは薬を去痰剤1種類だけに整理した。 「薬を出し直しましょう。これだけ飲んでください。明後日にもう一回肺の音を聴かせてください。それまで、よく休み、よく食べて、よく眠ってください。無理しちゃダメですよ」 2日後、親子がやって来た。「どうですか」と尋ねると、「咳がだいぶ減りました」という答えが返ってきた。ぼくはもう一度聴診した。やはり胸の音はきれいだ。これなら心配ない。 「じゃあ、同じ薬を少し延長して処方しましょう。だんだん治るでしょう。4日後に何かひとつでも症状が残っていたら再診してください。全部治っていたら来なくても大丈夫です」 「ありがとうございます。よくなって、本当によかったです」 ぼくは母親に感謝されたが、別に名医ではない。だって、前の医者が出した薬が全部効かなかったら、アレルギーも細菌感染もあり得ないと判断できたのだ。後から診る医者は圧倒的に有利である。どの薬が無効かすでにわかっているからだ。