大統領選の賭けに勝ったマスク、トランプに「使い捨て」される可能性
「イーロン・マスクは、政治に関与しようとする他の億万長者とは異なっている」
「イーロン・マスクは、政治に関与しようとする他の億万長者とは異なっている」と、コロンビアビジネススクールでリーダーシップを教えるマイケル・モリス教授は述べている。「彼が公職に就いた場合、利益相反のリスクはあるが、マスクの動機は金銭的利益に基づくものではない。彼は人類の未来を変えると信じる会社に取り組んでいる」 ■米国を「ビルダー」の国にする マスクは、トランプの勝利宣言に先立つX(旧ツイッター)の投稿で、トランプの選挙活動を称賛し、彼の勝利を祝っていた。マスクはその後、トランプの集会で演説をした際の自身の写真を投稿し、「米国は自分で何かを立ち上げるビルダー(ゼロから新しい事業や技術を創造し、具体的な形にする人)のための国だ。これからは自由にビルドできるようになる」と語っていた。 マスクは、11人の子どもの父親であり、テスラやスペースXに加えて、xAI(エックスエーアイ)やボーリング・カンパニー、ニューラリンクなどの複数の会社の経営で多忙を極めている。その彼が、政府の役職をこなせるかどうかは不明だが、一部の投資家は期待を寄せている。 ロサンゼルスの資産運用会社ガーバー・カワサキのプレジデントのロス・ガーバーは、「それは間違いなく良いことだ」と語る。彼は、マスクが政府に規制緩和を働きかけ、幅広い企業に恩恵がもたらされると考えている。 約6000万ドルのテスラ株を保有するガーバーは、「企業が政府からの無意味な書類の要求にどれだけの時間と資金を費やしているかを人々は知らない。そのような書類は、政府の役人自身も何を言っているか理解に苦しむことについて延々と書かれている」と述べている。 ただし、ガーバーは、マスクがEVや関税に関するトランプの政策に影響を及ぼすかどうかについては不確かだとした。関税は、輸入されたパーツや材料で製造されるテスラ車に大きなコスト増をもたらす。
トランプは自己主張の強い取り巻きにすぐに飽きてしまう
「それは、トランプが誰の話を聞きたいかによるだろう。マスクには、中国を含むさまざまな国を満足させるための微妙なバランスが必要だ。それは非常に繊細なダンスで、うまくできるかどうかはわからない」とガーバーは続けた。 ■トランプに「使い捨てられる」可能性 一方、テスラ強気派で知られる株式アナリストのダン・アイヴスは、「トランプ政権は、EV産業全体にとってはマイナスだろう。EVの補助金や税額控除が撤廃される可能性が高いからだ。しかし、テスラにとっては大きなプラスと見ている」とリサーチノートに記した。 「テスラは、この業界で他に類を見ない規模とスケールを持っている。このことは、EVの補助金が打ち切られた環境でテスラに明確な優位性をもたらす可能性がある」と彼は続けた。 アイヴスはまた、トランプがロボタクシーの夢を加速させるために、この技術の進展を阻害する規制を制限する可能性もあると指摘した。「このシナリオでは、自動運転テクノロジーの開発の迅速化が最優先事項となり、中国に先を越されないように前倒しされる可能性がある」 過去1年で急速に発展したマスクとトランプの緊密な関係は、複数の業界で大きな存在感を放つマスクの影響力を、今後の数年間でさらに高める可能性が高い──しかし、それは、この蜜月関係が続くならばだ。 「マスクは、権力が大好きだ。政府に頼って会社を築いてきた彼が、新政権に深く関与するのは非常に有益だ」とガーバーは語る。 「ただし、あまり語られていないリスクは、トランプが自己主張の強い取り巻きにすぐに飽きてしまうことだ。トランプは、マスクの力を利用して勝利を引き寄せたが、大統領に就任したトランプには、マスク以外にも多くの利害関係者が群がってくる。そして、前回の政権を思い出してみると、発足当時にトランプの側にいた人たちは、35日目にはほとんど消えていた」とガーバーは語った。
Alan Ohnsman