「野望は92歳まで音楽を」年を重ねるほど人生は面白い『カムカムエヴリバディ』作曲家 金子隆博
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の音楽を担当する米米CLUBのメンバー“フラッシュ金子”こと金子隆博さん。ドラマの中で流れる楽曲は、コロナ禍の困難の中で、金子さんと第一線で活躍する音楽家たちによって作り上げられました。金子さんは視聴者に「自分の中のソウルミュージックを届けたい」と語ります。42歳の時、意思に関係なく筋肉が収縮・硬直する病気「職業性ジストニア」を患い、サックス奏者の道を断たれた後も、次々と新たな音楽を紡ぎ出す原動力について、金子さんにお話を聞きました。(Yahoo!ニュース Voice)
『カムカムエヴリバディ』作曲に込められた思い
――NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の音楽はどのようにして作られたのでしょうか。 『カムカムエヴリバディ』の音楽をやらないかと言っていただいたのは、約2年前でした。 2年前ということは、コロナ前夜ですよね。2020年4月にはもう外出ができるムードじゃなかったと記憶しています。でもやっぱりあの2020年4月~5月はすべてのアーティストが自分の今の気持ちや、自分なりの表現をコロナあけにパフォーマンスできなかったら、そのアーティストの看板をあげることなんかできないなと思いながら曲作りをしていたはずで、それは僕も全く一緒でした。 だから『カムカムエヴリバディ』のために作った音楽でもありますし、自分の人生を表現した音楽でもあると思ってます。自分にとってのソウル、自分にとってのゴスペル、自分にとってのジャズというように、自分が一番好きな音楽を当てはめて想像してもらうとわかりやすいかと思います。自分の中のソウルミュージックを提出して、皆さんに聴いていただきたいと思って作った曲になっています。
御年88歳のサックス・プレイヤー “世界のナベサダ” 渡辺貞夫に演奏依頼
――『カムカムエヴリバディ』のレコーディングには、世界的なサックス奏者の渡辺貞夫さんが参加されています。 僕らが高校生の時は、渡辺貞夫さん、日野皓正さんがテレビCMに出演されているくらい、当時の日本はジャズインストブーム、フュージョンブームでした。自分もサックスを始めた頃に、世界的に活躍しているニューヨーク帰りの日本人で渡辺貞夫っていう人がいるのだと知り、それから貞夫さんのアルバムをずっと聴いていました。 貞夫さんは20代から日本のジャズシーンをずっと牽引されてきていて、現在、御年88歳。今でも毎年のように自分のオリジナル曲を海外で録音していらっしゃるので、わざわざ他人の曲なんか演奏しなくてもいいんです。 そんな渡辺貞夫さんに、自分の曲にOKを出してもらわないといけないのですから、僕にとっては、録音現場でレコーディングをする時より、その前の段階の方が勝負だったわけです。この心理わかりますか? 完璧なデモを準備して貞夫さんに聴いてもらい、吹いてもいいよって言われる。もうそこまでの緊張感はすごかったです。 渡辺貞夫 1933年宇都宮生まれ。高校卒業後に上京、秋吉敏子のコージー・カルテットをはじめ数々のバンドに参加。バークリー音楽大学への留学等を経て、日本を代表するトップミュージシャンとして、ジャズの枠にとどまらない独自のスタイルで世界を舞台に活躍。