過去最悪のインフル流行危機!医師が考える“最重要”な感染対策
11月12日、厚生労働省はインフルエンザの1医療機関あたりの平均患者数が、流行の目安である「1」を上回る「1.04人」となったと発表。東京都でも11月に入り「1.12人」になるなど、今年もインフルエンザの流行シーズンがやってきた。 毎年寒くなると流行するインフルエンザだが、今年の冬は例年以上の警戒が求められる。夏から流行しているマイコプラズマ肺炎、そしていまや通年で流行の波を繰り返す新型コロナウイルスも加わり、3つの感染症が同時に流行する“トリプルデミック”という緊急事態が懸念されているのだ。 「11月に入り、急に気温が下がったため、極端な寒暖差に体の免疫力が追いついていかなかったのでしょう。ここへてきてインフルエンザの患者数が一気に増えてきました」 こう話すのは、五良会クリニック白金高輪理事長の五藤良将先生。 「いまも一定程度の感染者がいる新型コロナウイルスに加えて、今年はマイコプラズマ肺炎が過去最大の規模で広がっており、当院にも多くの患者さんが来られます。そこにインフルエンザが加わることで似たような症状の感染症が重なる可能性が高く、診断にはいっそうの注意が必要だと感じています」(五藤先生、以下同) 今年の夏に定点あたり「2.46」という過去最大規模の感染者が出たマイコプラズマ肺炎は、いまなお感染者数が高止まりしている。 「肺炎マイコプラズマという細菌による感染症で、初期には発熱や感といった風邪に似た症状が出ますが、乾いたが多く見られます。今年の傾向として、しつこい咳に悩まされている人が多い印象を受けます」 新型コロナウイルスとインフルエンザはいずれもウイルス性の感染症だが、3つとも感染経路は飛沫や接触で、感染拡大のスピードが速いという点は共通している。寒さが急に厳しくなると、人間の免疫力は低下しがちになり、感染拡大に拍車がかかる。乾燥した空気の下で、感染拡大のリスクはさらに高まることに。 もう一つの要因として考えられる“ステルス感染”にも五藤先生は警鐘を鳴らす。 「去年から今年のうちにインフルエンザや新型コロナウイルスにかかったことのある人は、抗体を保っているケースが多いようで、たとえまた感染しても、あまり熱が出ないなど、症状が目立たないことがあります。このため、していることに気づかず感染を拡大させてしまうリスクがあります」 コロナ禍の感染症対策が緩和されたことも関係しているようだ。 「新型コロナウイルスが2類だったときは手洗い、うがい、マスク、咳エチケットなど感染症対策が徹底されていたため、ほかの感染症もまん延しなかったのですが、5類になったタイミング以降、いろいろな感染症が拡大していると見受けられます」 また、インフルエンザの流行が例年より早まりつつある背景には、インバウンドの増加や、海外からの通年の“持ち込み感染症”の影響も考えられると五藤先生は指摘する。