<矢野奨吾×内田雄馬>「映画 ギヴン 海へ」インタビュー(1) 「好き」を大切に 真冬、立夏と歩んだ6年間
--そんな立夏を演じる上で、これまでと変化はありましたか?
内田さん 演技においては、何かを変えようとか、こういうふうに見せてやろうと考えるのではなくて、この作品は会話劇であるからこそ、お互いのコミュニケーションの中で「あ、変わったんだな」と感じてもらうような作りのほうがいいのかなと思っていました。だから、なるべくフラットで、狙いをつけすぎないということをすごく大事にしました。そうすることで、お互いに引っ張り上げられるようなお芝居ができたと思います。
--収録で印象に残っていることは?
矢野さん 今回は最後に「ずっとぜんぶこのままならいいのに」という、真冬のモノローグがあるんです。僕は最初、そのセリフを「この時間がずっと続いていけばいいと思えるほど今幸せだ」という捉え方をしていたんです。でも、音響監督の菊田(浩巳)さんから「真冬は、いつかこの幸せの時間がなくなってしまうことが分かっているからこそ『ずっとぜんぶこのままならいいのに』と言っている」というディレクションをいただいて、自分寄りに解釈してしまっていたな、幸せを噛み締めすぎていたなと気付いたんです。真冬の物事を悲観してしまうところとか、由紀という大切な人を失って前に進んでいるという根幹の部分を忘れてしまうほどに、僕自身が立夏との今の人生を幸せに捉えてしまっていたなと。最後になって改めて真冬のことを知れたような感覚でした。
内田さん 今回、最初のテストの時に菊田さんから「全員大人すぎるな」と言われたんです。「ギヴン」の収録では、本質的な部分で会話をしていくことを大事にしていた分、役者さんのその時の感性がすごく生きてくるんですよね。これは僕の考えなんですけど、役者って、演技に自分自身の「こうだったらいいな」を乗せることで、個性につながると思っているんです。だから、今回もキャラクターたちが幸せな未来に向かうために、「この決断をしたほうがいいだろうな」という願望みたいなものがどこかにあって、それが“臭み”になっちゃったという。それが演技にも乗りすぎてしまって、悩みが解決しているような感じになってしまった。